第833話 瓦解する西大陸

そして天之御は星峰の部屋を後にし、それから程無くして涙名も部屋を後にする。

一人部屋に残った星峰は


「さて……私も腹を括ったわ、さあ、貴方達はどうするの?」


と呟いてから床に入り、そのまま瞼を下ろしていく。

その頃、西大陸拠点に帰還したコンスタリオ小隊であったが、その場の空気は酷く淀んだ物になっていた。

コンスタリオ小隊とアンナースはその空気を察知し、急いで司令室へと向かっていく。


「司令官、一体何があったの……此の澱んだ空気は……」


アンナースがそう尋ねると司令官は


「先程あの要塞が陥落したと同時に人族側の各タウンで一気に住民の反発が巻き起こっているんです。

どうしてあんな無謀な侵攻に協力したのかと」


と明らかに沈んだ顔と声で告げる。

それに対しコンスタリオが


「進行に協力した……それが問題になったと?」


と問いかけると司令官は


「各タウンの詳細は私にも分かりません、ですが今回の一件により侵攻に協力した部隊はほぼ壊滅へと追いやられ、人族部隊の戦力は決定的に不足してしまいました。

その結果、現在の戦力では西大陸の防戦を維持する事すら難しくなっています。

その為に住民が不安に駆られ、今回の暴動に発展しているのだと……」


と更に言葉を続ける。

その沈んだ顔と声が此の一件が如何に深刻かを物語っていた。


「防戦の維持すらって……それじゃ……」

「ええ、このまま行けば遠からず此の本部も陥落することになるでしょう。

此の本部からは貴方方を除いた戦力は派兵していませんがそれも又協力をしていれば此処まで被害は深刻にならずに済んだという暴動の種になっており、協力の有無を問わず軍部の責任を問う声が各地で上がっています。

一方で派兵していないタウンでは暴動は起きていませんが、恐らく此処と同様、他のタウンからの突き上げにあっているかと」

「その詳細については確認していないの?」

「していないと言うよりも出来ないのです。

どのタウンも音信不通になっており、此方から何度連絡を送っても繋がらない状態です」


シレットの発言に続く司令官の言葉により、此の西大陸の人族部隊が外部ではなく、内部から崩壊しつつあるという事が一同には容易に想像出来た。


「此のタイミングで内部から問題が噴き上がってくるとは……」

「私達も今後、どうなるか分かりません……」


モイスの警戒心が強い発言に司令官も思わず弱音を口に出す。


「そうだとしたら、一体どうすればいいの……」


その弱音を受けてしまったのか、シレットの言葉も弱気なものとなる。

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