第832話 旧知の不安
「他の大陸を攻め落としている以上、恐らく南大陸はこれまでで最大の激戦区になるでしょうね。
恐らくはブエルスから加入した部隊も前回のリベンジとばかりに仕掛けてくるでしょうし」
「うん、恐らくは以前より更に士気が上がっていると思う。
只、コンスタリオ小隊がどう動くかにもよるだろうから一枚岩というわけではないかもしれないけど」
現状を踏まえた上で南大陸を分析する涙名と星峰、だがその顔は無理に冷静さを作っているようにも見えた。
「星峰……涙名君……」
その表情を察したのか、空狐はふと呟くがそれ以上何も言う事は無かった、いや出来なかった。
彼等の事情を一際知っているだけに自分に何かを言う資格があるとは思えなかったのだ。
「兎に角、今日は作戦終了後だから自室に戻って休んで、あの要塞の解体も南大陸の侵攻もどのみち直ぐに出来ることじゃない」
天之御がそう告げると他の面々もそれに同意し、一先ずその場は解散となる。
だがその後涙名は自分の部屋に戻らず、星峰の部屋を訪ねてくる。
「星峰……」
扉の前でそう告げる涙名に対し星峰は何も言わずに部屋の中に招き入れる、その訪ねてきた理由は検討がついていたからだ。
そして椅子に座り、何かを切り出そうとした矢先に
「やっぱり、君達は話をしようとしていたんだね」
という声とともに天之御が部屋の前に現れる。
「天之御……という事は気付いていたの?」
「確証は無かったけど、次の場所が場所なだけにね」
天之御も又、星峰と涙名の心境を察していた、それ故に気になっていたのだろう。
「天之御……」
「不安があるなら遠慮なく口に出してくれて構わないよ、それを抱えたままブントと戦う方が余程問題があると思う」
少し返答に困った声をだす星峰に対し天之御は弱音を出してもいいと告げる。
すると涙名は
「やっぱり……天之御に隠し事は出来ないね。
勿論不安だし、嘗ての同胞と戦うのは気がひけるよ、これまでだってそうだったけど、今回は特に……ね」
と自身の内側に秘めていた弱音をふと漏らす。
それに続けて星峰も
「ええ、だけど此処で立ち止まる訳にはいかないとも思っているわ。
何しろこのままではその同胞がブントに利用され続ける事になってしまうのだから」
と自身の弱音を口にするが、同時にその内心からはこの戦乱を終わらせたいという強い意志も感じられる。
「そうか……そうだね、君達の同胞も、そして南大陸の人族達もこれ以上ブントの手駒にさせる訳にはいかない!!」
その言葉を聞いて杞憂が無くなったのか、天之御も強い口を上げる。
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