第800話 凍てつく眠りへ

「くっ!!迎撃体制をとってきたという訳ですか!!」


人族部隊の兵士はそう言うと飛び掛かってきた兵器に対し武器を向けるが反応が一歩遅れ、兵器の突進をその身に受けてしまう。

手で身を守った事で直接体に打撃を受けるのは阻止したものの、跳ね飛ばされた傷は決して浅くはない。


「大丈夫!?くっ……」


天之御はそう言うと追い打ちをかけようとする兵器に接近し手に妖力を込める。

そして妖力を込めた手を刃物の如く振り回して兵器に当て、その部分を切り裂く。

他の兵士や星峰も次々と迎撃体制をとっていくが、飛び掛かってくる兵器は隣の部屋で次から次へと生産されてくるために終わりが見えない。


「くっ、このままでは流石に……」


人族部隊がふと弱音を漏らすとそれを聞いた天之御が


「星峰、ここから手掛かりは得られそうにないんだね」


と唐突な質問を星峰にかける。

すると星峰は


「ええ、残念だけどね……だけど、この状況は寧ろその方が好機かもしれないわ」


と返答する。

それは天之御の質問の意図を察したが故の返答であった、それを証明するかの様に天之御は


「分かった……魔王妖術、白銀の旋風!!」


と叫ぶと妖術を発動させ、兵器の生産ラインに猛吹雪を発生させる。

そしてその吹雪が止んだ時、そのラインも兵器も全てが凍てついていた。


「生命として生きられない存在……せめて安らかに眠ってほしいものだ」


天之御がそう告げると人族兵士、星峰も黙って首を縦に振りその場を後にする。

そして部屋の外に出ると一同はそこから別の場所へと向かっていく。


「この施設の構造がまだ分からない以上、手探りで探していくしか無いわね」


星峰がそう呟くと天之御も


「うん、だけど終りが見えない訳じゃない!!」


と続ける。

人族部隊兵士も


「確かに、先程の生産ラインが凍てついてから兵器の迎撃が明らかに減少していますからね」


と言葉を続ける。

人族部隊兵士の言う通り、先程の交戦以降兵器による迎撃の回数は明らかに減少していた、それだけ先程のラインに依存していたということなのだろうか。


「そうであれば良いのだけど、あそこだけとも思えない。

決して油断はしないで」


星峰はそう告げ、つい気が緩んでしまいそうになるこの状況を引き締める。

そして内部の捜索を続けるものの、その内部構造は過剰な訓練施設や薬物投与の痕跡等、これまで調査してきたブントの施設と大差がある訳ではなかった。

だがそれらの規模はこれまでの施設より大きく、それがこの施設がブントにとって重要であるという印象を与える。

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