第799話 弄ばれる生命
そして奥に進んでいくとそこで一同は生産ラインとそれに則したデータルームらしき2つの繋がっている部屋へと辿り着く。
「ここは……どうやら此処で兵器が生み出されている様ですね」
人族部隊の兵士が確認するような口調でそう告げる。
そう告げられるまでもなくそうであるのは明らかであったが、兵士は自分自身にも言い聞かせようとしているのか、敢えてそれを口にする。
「しかも此処で生み出されている兵器は只の兵器じゃない、あの外見は……」
天之御は兵器が生産されているラインの更に奥を目視していた。
その視線の先にある物を見て星峰と人族部隊兵士も思わず困惑した表情を浮かべ、言葉を飲み込む。
そこには兵器の機器を取り付けられた生命とも言うべき外見の兵器が生み出されていた。
見た目だけであれば本当に武器を持った生命の様にしか見えない、だがその生み出され方は兵器のそれであり、その存在が生体兵器として生み出されているという事を物語っていた。
「あれは……生命に対する冒涜としか言い様がありませんね……」
そう語る人族部隊兵士の声は一見すると冷静な口調にも思える、だがその内心は確実に怒りがこみ上げてきているという事を星峰や天之御は見逃していない。
無論、彼等二人もまたそうであるというのも事実ではあるが。
そしてデータルーム内の機器を見た星峰は何時も通り電源を入れるが、その直後に表示された画面はただ真っ白になっているだけであった。
「これは……」
それに当然、星峰は不信感を抱いて更に調査しようとするが、データらしきものは欠片も見当たらない。
「星峰、どうしたの?」
天之御がそう問いかけると星峰は
「どうやらこの施設は近々廃棄するつもりなのか、それとももうデータを集める必要はないのか……
このデータ収集機、既に内部のデータが破棄されているわ」
と返答する。
そう、この機器は既に内部の記録が破壊されており、そこから情報を得る事は不可能であった。
それが意味する物とは一体……一同はそう考えずにはいられなかったが、直ぐに天之御は
「だけど生産ラインは今も動いている、となるとあの要塞以外にも戦力は確保したいのか、それとも此処が誘い込む為の罠なのか……
どちらにしても、そうであるなら躊躇う必要はないね!!」
と冷静だが確実に怒りを込めた声で話、星峰や人族部隊兵士もそれに同意する。
するとその瞬間、生産ライン奥で生産されていた兵器がいきなりデータルームに飛び込んで来る。
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