第794話 最後の突入者

すると近くの地面の中に一箇所だけ他よりもやや色の濃い草が生えている場所を見つける。

辺りは手入れされており、一見すると住宅の庭のようにも見える。

だがそれを見た八咫は


「この草……何で他より色が濃いんだ?周囲が手入れされてるって事は!!」


と疑問を抱き、その疑問を確かめる為にその草に近付いて行く。

するとその草はみるみる内にその姿を変え、植物と兵器が入り混じった様な姿となる。


「この草……兵器が擬態してたってのか!!だがこんな擬態はこれまで……」


八咫が困惑の言葉を言い終わる間も無く、その植物兵器は体の蔦を伸ばして八咫を拘束しようとする。


「くっ、みすみすやられるかよ!!」


八咫はそう言うと上空へと飛翔して蔦を躱し、そのまま


「黒羽吹雪!!」


と言って黒い羽を正に吹雪の様に無数に飛ばし、その羽根を突き刺し、切り裂いて植物兵器を切断していく。

そして植物兵器を伐採した後、その場に着地するとその兵器の下に隠された階段があるのを見つける。


「これは……こんなところに階段がある事自体、不自然すぎるわな」


そう呟いた後、八咫は躊躇うこと無くその中へと入っていく。

そして階段を降りていくとそこには大広間のような部屋とその奥に見える無数の扉があった。


「この光景……デジャヴか?それとも大本を模写したのか……何れにしろ、猛々しい盗人がやりそうな事ではあるな」


八咫がそう呟いた直後、目の前に光る玉のような物が出現する。


「おいおい……こんな所まで模造してるってのか!?」


そう八咫が呟いた直後、その光の玉は一箇所に集合して人の形を取り、実体化してや他に襲いかかってくる。

その人族は魔術を使い、八咫を遠距離から攻撃してくるが八咫は余裕でそれを回避し


「種や仕掛けが分かってなかったらお前に困惑してたがな……けどな、俺には分かってんだよ!!」


八咫はそう言うと羽を一本抜いて手に持ち、その羽根を剣に変化させて人族に接近しその体を両断する。

するとその人族は溶ける様にその場に消滅していく


「やっぱりな……姿は似せていても本物じゃねえ」


一見すると先史遺産で交戦した者と同じ様に思えたその存在だが、八咫には分かっていた、これはそれを模倣した存在に過ぎなかったという事を。


「一体どうやって模造品を作り出したのかは分からねえがな……それが俺の逆鱗に触れるって事は知ってたのか?」


姿の見えない敵にそう大声を上げる八咫、それは内心に大きな怒りを抱いていることの現れに他ならなかった。

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