第793話 悲しみの重なる先
「動きや思考に柔軟性がある……生物と兵器のいいとこ取りって訳?
だとしたら尚の事、こんな奴等を野放しにしておく訳には!!」
岬はそう叫ぶと素早く生物兵器の裏側に回り込み、妖力を込めた格闘術で生物兵器を粉砕していく。
岬の妖力が怒りで増しているのか、その攻撃を受けた生物兵器は次々と粉砕され、その場に欠片や肉片を落としていく。
それを見た岬は
「別々ではなく、一緒に崩れ落ちていく……これ程気分の悪いことはないわね……」
と不快感を隠さない。
そして全ての生物兵器を粉砕し、次の兵器も出現しない事を確認すると岬は
「こんな物まで生み出すなんて……先史遺産の技術は一体何処まで生命の心を堕落させるというの……」
と改めて先史遺産の恐ろしさを意識するのであった。
そして生物兵器の事を知った岬はそれを伝えようと一瞬思い通信機に手を触れようとするものの、直ぐに思い留まって通信機を戻す。
「ここで通信をすると内部に私が潜入しているのを知られてしまう可能性があるわね……それに皆も恐らくはここに向かっている筈、だったらこの先で合流出来る!!」
そう思って敢えて通信機を使わず、先へと進んでいく事を選ぶ。
それは他の面々を信頼しての事であった。
一方、唯一司令部の建物まで辿り着いていなかった八咫も漸く建物に辿り着き、その周囲を見渡していた。
「漸く此処まで来る事が出来たか……だが、問題はここから先だ。
他の面々はもう中にはいっているのか、それとも……」
八咫はそう呟くと周囲を見渡し、出入り口を探すものの当然此方にもそんな分かり易い形で入り口が存在している訳はなく、八咫は考え込む。
「黒羽の穿ち!!」
そう大声で叫んだ八咫は自身の羽をまるでドリルのような形に変化させて飛ばし、建物の壁に穴を開けようとするがやはり此処でも建物の壁は柔軟な形に変化し、そのドリルを飲み込もうとする。
だがその直後にドリルは爆発し、その壁に少なからずダメージを与えるが、そのダメージすらもすぐに修復してしまう。
「この建物……建物自体が生物だとでも言うのか……もしそうだとしたら、那智町の地下のあの技術も組み込まれているのか……」
八咫の脳裏に嫌な記憶が過る、それはただ単に過ったと言うだけではない、この施設に関わる全てにおいてその記憶が何らかの形で関わってくるのではないか、そう思わずにはいられなかったのだ。
「だとしたらこんな所で足止めを食らってる訳には行かねえ!!」
八咫は気合を入れ、改めて周囲を見渡し出入り口を探す。
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