第792話 生物兵器

「くっ、流石に簡単に中には入らせてくれそうにないわね……なら!!」


岬はそう言うと手に妖力を込め、その拳を壁に叩きつけて穴を開けようとするが、拳をぶつけられた壁は穴が開くどころかその部分をスライムの様に軟化させ岬の拳を飲み込んでしまう。


「!!これって……」


そのまま飲み込まれそうになった岬は慌てて手を抜き出し、その感触からこの建物もまた擬態兵器である事を確信する。


「この建物も又兵器だというのね……自ら作り出した兵器の餌として腹の中に収まっているのか、それとも鉄壁のシェルターとしているのか……」


少し困惑しながらも岬はそう呟き、別の入口を探そうと周囲を見渡す。

すると少し離れた場所に空狐たちが入っていった場所とは違う入り口を見つけ、そこから中に突入する。

その様子からは時間が惜しいという考えが感じられる。


「この建物自体が兵器だとすれば、もし仮に誰かが先に来ていたとしてその事実に気づかなければこの建物自体を監獄にされかねない……急がないと!!」


岬の焦りにはこうした内心も含まれていた、だがその焦りを嘲笑うかの様に目の前の床が軟化し始め、その軟化した箇所が兵器を模って岬に襲いかかる。


「床の一部が兵器に変化した……なるほど、これなら迎撃部隊を回す必要も無いって訳ね!!」


岬はそう言うと


「拳衝の渦!!」


といって妖力を込めた拳を振りかぶって衝撃波を起こし、その衝撃で目の前の兵器を吹き飛ばして一掃する。

だがその直後に再び床が軟化し、再び兵器を模ってこようとする。


「何回掛かって来ても……何っ!?」


迎撃体制を取る岬の顔が不意に困惑したものになる、それは模られた兵器の外見が生物と兵器が入り混じったような外見をしていたからだ。


「生物と兵器が入り混じっている……こんな兵器は見たことがないわ……」


困惑する岬を尻目に兵器は攻撃を仕掛けてくる。

迎撃体制を取る岬だがその兵器の行動は早く、すかさず接近して格闘戦を仕掛けてきたかと思えばそこを他の兵器が機関銃で支援し、岬につけ入る隙を与えない様に畳み掛けようとする。


「くっ、これまでの兵器よりも柔軟性があるって訳……厄介な話ね……」


岬はそう呟くとジャンプで兵器の背面を取り、素早く蹴りを叩き込んで一体の兵器を壁に跳ね飛ばす。

その直後に他の兵器が機関銃を乱射してくるものの、岬は上手く立ち回ってその機関銃を当てて同士討ちを狙う事に成功する。

だが兵器もそれでは倒れず、尚も岬を狙ってくる。

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