第790話 司令塔突入

その仮設の証明なのか、目の前には尚も多数の兵士が立ち塞がる。

その目からは生気が感じられず、最早生命というより人形としか言い様が無い雰囲気が漂っていた。

それもここに来るまでに戦っていた兵士より更にそれが強い、空狐と涙名にはそう感じられた。


「一体どれ程の兵士を生み出してるって言うんだ!!

こんな生気の無い存在……もう生命とは言えない」


ここに来て涙名が内に秘めてきた怒りを爆発させる様な発言をする。

それは空狐も同様だったらしく、涙名の怒りに頷く。

その頷きが賛同を意味しているのは最早言うまでもない事実であった。

その言葉も虚しく響くかのように兵士達は魔術の詠唱を始め、手に銃火器を持ち攻撃を仕掛けてくる。

空狐と涙名はそれを避け、直後に空狐は


「狐妖術……桜花色の刃!!」


と言って桜の花弁の様な小さな刃物を次々と飛ばし兵士と兵器を切り裂いていく。

そしてその後には兵士と兵器の遺体が残されるが、それを見た空狐は


「一体どれ程の屍を奴等は積み上げれば気が済むの……それに私達の一族も加担していた。

未だにそれから逃れられないと言う訳なのね……」


と内心で混沌とした葛藤を抱える。

その後空狐と涙名はそのまま前に進んでいき、遂に中央司令部の建物へと到達する。

そこには入り口が存在しており、二人が知る由もないが先程コンスタリオ小隊が内部に突入した際とは明らかに違った雰囲気があり、寧ろ此処から入って来る事を歓迎しているようにも見えていた。


「ここが中央の司令塔……それにしては入り口が歓迎ムードに満ちているわね」

「うん……勿論それが却って不気味なのは言うまでもないけど」

「ここまで来て他に道を探している余裕なんて無いわね、行きましょう!!」


入口前で空狐と涙名がそう話した後、二人は司令塔内へと入っていく。

すると二人の予感が的中したのか、入って早々に壁からミサイルの様な物が放たれて二人の元に迫って来る。


「闇妖術……暗黒の守護壁!!」


涙名がそう叫んで眼の前に黒い壁を出現させ、そのミサイルと爆発から自分と空狐を守るがその周囲の壁は崩れ落ちる。

だがその壁は一瞬で修復され、瞬く間に元通りになる。


「崩れ落ちた壁が一瞬で……それに今のミサイル、まさか岬の言っていた建築物に擬態した兵器って……」

「うん、恐らくはこの中もそうなんだと思う。

だとしたらここは奴等にとってどれだけ暴れても支障がない縄張りって事になるね」


空狐と涙名は今の一連の流れを見て嫌な予感を感じずにはいられなかった。

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