第789話 呪いの副産物

「!!いきなり前面を機関銃に!?」


人族部隊の兵士が困惑した隙を突いてきたのか、兵器がすかさず乱射してきた機関銃を避け切る事が出来ない。


「くっ……」

「つうっ……」


避け切れなかった機関銃を身に受け、人族兵士は致命傷こそ負っていないものの少なからずその身に傷を残す事になる。

そのまま何とか反撃に移るものの、兵器は受けた銃弾をその形を軟化させて取り込み、斬撃や格闘術もその軟化した体で受け流してくる。


「くっ、何だ此奴らは……」


困惑する兵士達に兵器は容赦なく襲い掛かろうとする。

そこに星峰が割って入り


「孤妖術……青色の永遠!!」


と言って兵器の周囲に青色の妖術を出現させ、その妖術で兵器を凍らせていく。

そのまま機能を停止し、兵器はとりあえずおとなしくなる。


「星峰さん……」

「ええ、言いたい事は分かってる。

この兵器は恐らく擬態兵器の試作品又は副産物と考えてまず間違いないと思うわ」


兵士が疑問を含んだ口調で問いかけると星峰はその答えを先読みした様な返答を返し、その回答に納得したのか兵士も凍てついた兵器の方に目をやる。


「この兵器は恐らく、擬態兵器の擬態能力を武器として用いる形で生み出された存在。

試作型として生み出されたのか、それとも副産物なのかは分からないけど何方にしても放置は出来ないわね。

今のは機関銃だったからまだ対処出来たけど……」

「万が一変化したのが巨大爆弾だったりしたら、そしてそれが街中で大量に……

そんな事になったりしたら大惨事になる」


星峰の口調に不安が混じっている事を察した天之御はその不安の中身を推察し口にする。

それは確かめる為でもあり、又天之御自身も同じ不安を抱いていた為でもあった。

その回答に対し、星峰は首を縦に振って頷く。


「ええ、考えたくはないけどね……何れにしてもここで出てきた以上、何らかの手掛かりを掴めるかもしれないわ。

それにこの兵器が問題の要塞に搭載されている可能性も十分考えられる、急ぎましょう!!」


星峰はそう告げると天之御達に急ぐ様に促し、天之御達もそれに続いていく。

一方、問題の要塞については他の面々が司令部を目指しているものの、度重なる兵士や擬態兵器の妨害により中々中央司令部に辿り着けずにいた。

そんな中、真っ先に突入した涙名と空孤が漸くその司令部の壁を肉眼で確認出来る場所にまで辿り着いていた。


「ここに来るまでにかなりの数の兵士を倒してきたけど、あれだけの兵士を投入してくると言う事は……」

「幾ら兵士を犠牲にしてもいいって事だろうね……」


一見するとさらりと言っているように思える空孤と涙名だが、その言葉には確実に怒りが混ざっていた。

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