第774話 渦巻く毒牙
「それらのタウンについては後々その件で追求すればよい、現状では此方に対して何かをしてくると言う事はあるまい」
そう語る人族の顔は何処か自信に満ちていた、余程この要塞に自信があるのか、それとも……
「それはそうだが、一方で首都に残してきた防衛部隊と連絡がつかんのは気掛かりだな」
「確かに魔神族に襲撃されているのかもしれんが、この要塞が侵攻すれば直ぐに奪還出来る、今は首都よりも侵攻が優先だ」
会話をしている魔神族は首都の事を言いつつも要塞に自信を持っている口調を崩さない、それ程までにこの要塞は難攻不落なのだろうか。
「だが、周囲から魔神族部隊が徐々にこの要塞に迫りつつあるのも事実だ。
その点についてはどうする?」
「ああ、此方の自爆戦術に気付いてくるとはな……やはり此方の情報を持っている存在は優先的に排除しておくべきだったか」
「魔王の息子……奴を仕留めきれなかったのがここにきて災いに転じているか……」
天之御の事を言っているであろうその言葉を発する際は人族の顔も余裕を持った物から険しい物に変わる。
どうやら天之御とは深い因縁がある、そう予感させる程の顔であった。
「そして周囲の部隊に参加させている他のタウンの部隊についてはどうなっている?」
「既に此方に合流しているコンスタリオ小隊は魔神族と交戦し奮戦しているものの、完全に侵攻を食い止めるには至っていないようです」
「そうか……あの少女が目を付けているだけに期待はしているのだが、所詮はその程度なのか、あるいは魔神族がそれ以上の手練れなのか……
最も、懐に取り込んでおくに越した事は無いがな」
人族はそう呟くと密かに笑みを浮かべる。
一方、その会話の中で出てきたコンスタリオ小隊はというと背面部隊に対し一度戦況を報告しに行くという口実の下、要塞へとその足を進めていた。
「要塞には向かっていますが、動いているだけあって中々近付けませんね」
「あの移動速度も要塞の自身の一つなのかもしれねえな」
モイスとコンスタリオが口々に要塞についての不満とも皮肉とも取れる発言をするとコンスタリオは
「そうかもしれないわね……その力が良い方向に振る舞われるのであれば私達もこうして向かう事は無かったのかもしれないけど」
と言い、二人の考えを肯定する。
そう話している間に要塞を視界に捉える事は出来た為、コンスタリオ小隊の足はさらに速くなり、遂に要塞の壁の裏側まで辿り着く。
だが、そこに出入り口らしき物は見当たらない。
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