第775話 要塞の街

「これは……一体どうやって兵士達は中に出入りしているんでしょう?」

「後ろからは入れないようになっているのか、或いは……元から出入り口なんて存在しないのか……」


シレットが疑問を口に出すとコンスタリオは二つの回答を出し、それに対しモイスが


「元から出入り口が存在しないって、どういう事だよ!!」


と納得出来ないと言わんばかりの強い口調を出すとコンスタリオは


「起動前に主要な面々は乗り込んでいたのかもしれないって事よ、そうすれば出入り口を態々作る必要もなくなるでしょう。

最も、どうやって降りるつもりなのか……という疑問はあるけどね」


とモイスの疑念に対して一応の回答を示すものの、その内心では


「モイスが疑念を抱くのも最もね……一体どうなっているの?

そもそも降りる必要もないと言う事だとしたら……」


と自分自身でも回答が出ない疑念を抱き続けていた。


「で、どうするんですか?ここまで来てみすみすチャンスを逃すつもりはないのでしょう?」

「ええ、ここはこうするまでよ……パワー・チェーン!!」


シレットが発破をかけるような発言をするとコンスタリオはこう大声で唱えて右手から魔力で形成された光る鎖を出現させ、その鎖を外壁へと引っ掛ける。


「二人とも、私に掴まって!!」


そうモイスとシレットに指示し、二人が自身の体に掴まったのを確認するとその魔法の鎖は長さを縮めていき、三人を外壁の上まで運んでいく。

外壁の上に降り立った三人は要塞の中を見る。

するとモイスが


「おい……何だよこれ……」


と唖然とした表情で口にする。

三人の目の前には最早大掛かりなタウンと言っても良いレベルの都市の中の様な光景が広がっており、実際に住宅やビル等も立ち並んでいた。


「タウンそのものが要塞の中に内蔵されているとでもいうの……もしそうだとしたらこの要塞は……」


シレットの困惑した口調に対しモイスやコンスタリオは言葉を続ける事が出来ない。

それほどこの光景は異様な物であったからだ。


「動くタウンだとでもいうの……確かにそんな物がこうして目の前にあるのであれば戦争を勝ちたいと思う存在にとっては心強い事この上ないけど……」

「もしそれが敵だったとしたら、心穏やかではいられねえな……」


コンスタリオとモイスも又、こうした言葉を絞り出すのが精一杯であった、その直後に下から人族が城壁にいるコンスタリオ小隊を見上げているのが見える。

だがその雰囲気はどう見ても歓迎していると言った感じではない、手にしている銃がそれを証明していた。

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