第770話 内紛の人族

階段の上から差し込んできた光に導かれるままに星峰と天之御が出口に辿り着くとその目の前には異様な光景が広がっていた。


「な……何故だ!?何故お前達が……」


そう言いながら人族の兵士が崩れ落ちていく、その目の前にいるのは魔神族の兵士……では無く同じ人族の兵士であった。


「私達はお前達と同志などでは無い!!この世界を混乱させる元凶め……」


崩れ落ちる兵士の目の前にいる人族兵士はそう強い口調で吐き捨てるとそのまま周りを見渡す。

そして星峰と天之御を視界に入れると


「星峰さん、天之御さん!!」


と言いながら駆け寄っていく。


「君達、遅くなってすまない。

此方の手筈はどうなっているの?」

「計画通り順調ですよ、ブントが侵攻部隊に殆どの戦力を投入しているので此方に残っているのは完全に余り物みたいな部隊だけです」


天之御が駆け寄ってきた兵士に尋ねると兵士は得意げな顔でそう返答する。

どうやらこの兵士は天之御達の協力者の様だ、そして協力者は彼一人だけと言う訳では無い、周囲を見渡すと人族部隊同士が激しい攻防戦を繰り広げている。

本来同陣営に属する筈の部隊が訓練でもないのに二つに分かれて争っている、更にそこに魔神族の魔王が堂々と足を踏み入れている、傍から見れば異様としか言い様の無い光景であった、だが交戦している一方の人族部隊は星峰と天之御の存在を確認して明らかに動揺しているのに対しもう一方の部隊はそうした素振りは微塵も感じられない。


「貴様等!!魔神族と内通していたのか!!」

「内通していたのはお互い様でしょう?寧ろ貴方達が内通していたから此方側も種族の垣根を超えて結束する事になったのよ。

最も、それが世界本来のあるべき姿なのかもしれないけどね……」


人族兵士の一人が激昂するとそれに対して交戦している女性兵士が冷静とも皮肉とも、そして嫌味とも取れる発言を返しながらその兵士に対し銃口を向けて発砲する。

その弾丸は兵士の足を貫き、その場に倒れこませる。


「くっ、……裏切者が……」

「裏切り?あんた達のやっている事の方が世界に住む生命からすれば余程裏切りでしょうが!!」


裏切者という言葉に憤慨したのか、女性兵士の言葉も怒りの混じった物になる。

その一部始終を見ていた星峰は


「なら、その勢いと遅れた分の挽回をする為にも私達もじっとしている訳にはいかないわね」


と言いながら剣を手に取り、天之御も


「ああ、僕達も現時刻より参戦する!!」


と言って交戦体制をとる。

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