第771話 共闘の行方

「ええい、魔神族はたかが二体だ、このまま数で押し切ってしまえ、裏切者共と同じ様にな!!」


ブント側と思われる人族部隊の司令官はそう叫ぶと星峰、天之御側の人族部隊共々一掃しようとしているのか数に任せた総攻撃を仕掛けてくる。


「ちっ、学習能力のない連中もここまで来ると……皆さん、ここは……」

「あら、それは言いっこなしよ。

それに……遅れてきた分は取り返さないとね、孤妖術……白銀の投擲!!」


人族兵士が迎撃にあたろうとすると星峰はそれを制止し、目の前に白銀の槍を多数出現させ、その槍を放って迫ってくる人族兵士を貫いていく。

その速さは尋常ではなく、兵士達は誰一人として躱す事が出来ずに槍に体を貫かれ、その場に膝をつく事になる。


「星峰さん……これが……」

「さあ、行きましょう!!敵はまだこれだけじゃないんでしょ」


兵士が少々唖然としていると星峰は行動する様に促し、人族兵士に対して先に進む様に告げる。

その言葉が合図となり、人族兵士はその場にいる全員が侵攻していき、更にその中心には星峰と天之御が居た。

本来敵対している人族部隊の中に魔神族の魔王が居る、その光景は事情を知らない存在からすれば間違いなく混乱するであろう光景であった。

あが今の彼等には混乱はおろか、ほんの僅かな迷いすらもない。それほどまでにこの彼等の結束と決意は固い物があった。

そんな彼らの目の前にまたしても人族の迎撃部隊が現れる。


「また人族の部隊が出撃してきたか……残存兵力と言っても相応の数は存在しているみたいだね」

「ええ、ですけれどあくまで数で押してくるだけ、兵士の熟練性もないのであれば恐れるに足らずです!!」


天之御がそう告げると人族兵士は強い口調でそう言い返す。それを聞いた天之御は


「そうだね、なら遠慮なくいかせてもらうよ!!」


と返答し、その返答に人族部隊の兵士は


「えっ!?どういう……事です?」


と少し困惑した表情を浮かべる。

その困惑を尻目に天之御は


「魔王妖術……蒼穹の斬撃!!」


というと青色の巨大な斬撃を人族部隊に対して放ち、そこに混じっていた兵器を全て破壊する。

只一撃の事ではあるが兵器が目の前で全滅したのは紛れもなく疑い様の無い事実であった。


「これが……殿下のお力なのですね……」


その光景を目撃した人族兵士は人族としては初めて天之御の事を殿下と呼ぶ、その呼び名を用いたと言う事は彼等が紛れもなく志を共にした同志であると言う事を意味していた。

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