第739話 森の下に潜む物

「となると、残る兵士達はブントの構成員ではなく、ブントに都合よくつかわれてしまっている何も知らない兵士達……そういう事になるわね……」


星峰は淡々と語っているように見えるが、その表情は確実に何処か暗さを見せていた。

恐らくは何も知らず、只利用されている兵士の事を考えているのだろう、それがどういう意味なのかは本人にしか分からないが。


「そして、そう考えるとその兵士達はある意味ブントより恐ろしいかもしれない。

何しろ自分達の行動が本当に平穏を齎すと信じている訳だからね」


天之御のその言葉は何処か重みが感じられた。

その兵士達について何か思うところがあるのだろうか、それとも……


「今回の一件、気になる点はもう一つ、先史遺産の兵器が執拗に攻撃を仕掛けてきた事とその方法が気になるわね」


空孤がそう言って話題を変えると星峰も


「ええ、今回先史遺産の兵器は転移ではなく、直接地下から追跡して輸送部隊を攻撃していた。

それを可能としているのだとすれば、あの森の地下には相当な広さの先史遺産の遺跡が広がっている事になるわ」


と言葉を続ける。


「もしそうだとすると、あの森の地下には一体何が存在しているのか……最悪の場合、例の地下都市並みの空間が広がっている可能性もあるね」


天之御が最悪の場合としてその可能性を語ったのは勿論例として出した地下都市の事が念頭にあるからである。

もしあの地下都市レベルの空間が地下に広がっていたとしたら相当な脅威が眠っている可能性も十二分に考えられた。


「しかも出口に近付くにつれて戦力は増強され、部隊の精度も上がっていった、どう考えても最初の方の兵器が交戦した記録を後に出てきた部隊が反映させている様にしか見えない」

「ええ、もし仮にそうだったとしたら厄介な事になるわね。

今後抗戦する全ての先史遺産の兵器がその記録を反映させた上で襲い掛かってくるかもしれないもの」


涙名と星峰の仮説はあくまで今回の作戦を見ていたが故の推測であり、確証があるわけではない、だがこの二人の仮説に対し異を唱えられる程の状況証拠もなかった。

故に他の面々は只黙って頷く他ない。


「あの森の地下、そしてそこから発掘された先史遺産、今後要注意かもしれないね」

「それに備える為にも今日の所は解散しよう、各自調査をするのは構わないけど、くれぐれも先走った行動をしないようにね」


涙名と天之御のその言葉により、その場はお開きとなる、その後自室に戻った星峰が部屋の端末を起動するとそこにはコンスタリオから送られていた例のメッセージが届いていた。

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