第738話 魔神族の目

「発動するきっかけも不明、そしてその能力は本来短所となる部分を補填した上で大幅に強化し、寧ろ長所へと変貌すらさせる程の増強となる。

あの能力は誰にでも起こり得る物なの?もしかしたら私にも……」


そう呟くコンスタリオの発言は自分自身にも起こりうるかもしれないという不安と希望が入り混じったものであった。

その内心では二つの相反する感情が押し問答を繰り返しており、コンスタリオを答えの出ない迷宮へと押し込んでいく。


「あの力がどういう経緯で発眼するのか、それについては今後もしっかりと調査していく必要があるわね……」


コンスタリオはそう思うと手元の端末を起動し、その指を動かして文章を作成し始める。

そして文章が完成するとその手元の指は送信ボタンを押し、その文章を何処かへと送信する。

その相手は当然、スターである。

その文章はスターこと星峰の元へと送信されていた。

だが今回はその星峰の目にすぐには入らなかった、星峰も又、今回の一軒について天之御達と話していたからだ。


「ブント同士の自作自演はもう何度目だって話だけど、まさかそれに介入するとはね……」


星峰が少し呆れた様な口調で話す、その呆れが向けられていたのは天之御である。


「まあ、これでブント側の魔神族も一応気取られないようにしてるっていうのは分かったね、もう既にばれている事ではあるけど」


そう返す天之御の返答は星峰の呆れに理解を示しつつもその内心は察してくれと言う様な印象であった、いや、実際星峰は察しているのだろう。


「だからこそ、魔神族に命令を出した、先史遺産の技術が人族に渡れば大変な脅威になる、だから全力で輸送対象を破壊しろと」

「まあ、その命令自体は強ち間違いでもないよね、実際先史遺産の技術がブントに渡ったら大変な事になるのは本当な訳だし」


空孤と涙名がそう語った直後、更に八咫も


「ああ、先史遺産の技術はそれ自体が危険性を孕んでいる、もしあれがこれ以上ブントの手元に集中するようなことになれば惨劇は避けられない」


とそれを補填する様な発言を続ける。


「ええ、それは私も同意するわ。

けど結局、輸送対象を破壊するまでには至らなかった、人族部隊の思わぬ抵抗によって」


星峰がそう告げると涙名が


「見てて思ったんだけど、あの中にいるブントは一部じゃないかって気がする」


と唐突に口にする。


「ブントが一部?どうしてそう思うの?」

「あの部隊の兵士は生命をかけて魔神族に向かってきた、これまでの自作自演であればブントはあそこまではしてこなかった」


岬が理由を問いかけると涙名は明確にこう返答する。

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