第740話 一夜の葛藤

「コンスタリオからメッセージ……!?シレットまで例の能力を発現させた!?

しかもその能力は本来苦手である筈の格闘、剣術戦闘を著しく強化している……

一体どういう事なの……人族の魔術には……いえ、もしかしたら魔神族の妖術にもまだ知られていない何かがあるというの……」


コンスタリオのメッセージに目を通した星峰は普段の彼女からは想像出来ない程の狼狽えた声を挙げる、それ程シレットのケースは異例な事なのだろう。


「シレット……貴方がいきなりこの能力を発現させた事、そして剣術を使いこなした事、これはもしかすると今後の戦いの行方を左右する要素になるかもしれないわね……」


星峰の脳裏には一抹の希望と不安が等価値で過る。

無論、それはこれまで経験した事がない事態がこうも立て続けに起こっているという事態そのものに対する困惑もあるが、それ以上にシレットがその当事者であるという面もあった。

そのメッセージを見た星峰は幾つかの仮説を立てるものの、本人が居る訳でもない環境で仮説を立てても証明出来る筈もなく、気掛かりをそのままにして床に就く以外に選択肢はなかった。

翌日、何時もの様に目を覚ます星峰だったがやはり昨夜のコンスタリオの一件が気になっているのかその寝起きは明らかに何時もより悪かった。


「やはり眠れなかったわね……シレットの身に起きた事が気になりすぎる。彼女に一体何が起こったの?魔術とは一体……」


昨夜の続きの困惑をふと漏らす星峰だがその直後それを考える時間も与えないと言わんばかりに城内に警報が鳴り始める。


「警報……何かあったのね……」


星峰はそう呟くとすぐさま謁見の前へと向かう、いや、警報が鳴った時点で何か良からぬ事が起こったのは予想出来る事ではあった、だがそれを敢えて口に出したのはやはり昨日の動揺が故なのだろうか。

謁見の間に星峰が到着するとそこには既に他のメンバーも全員揃っていた。


「星峰で最後みたいだね、早速だけど本題に入るよ。

今さっき西大陸の例の森の周辺で大規模な先史遺産の兵器の侵攻が確認された」


天之御がそう告げるとその場にいた全員の顔色が変わる。

昨日危険視した場所とはいえ、あまりにも早すぎるその異変に胸騒ぎを感じずには居られなかったのだ。

続けて天之御は


「既に結構な数の兵器を確認してる、だけど一方で人族部隊は全く確認出来ない」


と告げ、それを聞いた涙名は


「人族部隊が全く確認出来ない?」


と天之御に問いかける。

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