第707話 虚無なる司令
「この兵器は一体……どっちの意味で解釈したらいいんだろうね?」
涙名が少し皮肉った言い方をすると兵器はまるでその言葉に反応したかの様に一同に向かって機関銃やレーザーを乱射してくる。
その様子からはこの施設を守ろうとしているとは思えない。
「周囲に対する配慮はまるで感じられないね、やはりこの兵器達も破壊の為に送り込まれたものなのでしょうか?」
霊諍がそう呟くと星峰は
「そうかもしれないけど、今それを議論している時間は無いわ」
と返答し、兵器の攻撃を身を翻して躱していく。
「そうですね、まずは此処に居る兵器を一掃する事を考えましょう!!」
霊諍はそういうと
「漆黒の帳……抹消の幕引き!!」
と言い、兵器の下から黒い幕を出現させ、その幕で兵器を両断する。
その両断は見事であり、先程見せた爪の一撃と同様兵器の急所を正確に突いていた。
その活躍により見事にその場に居た兵器は一掃され、施設への道が開かれる。
「さあ、急ぎましょう!!」
岬がそう言うと一同はその言葉通り中に突入していく。
中に突入するとそこは兵器も居なければ兵士もいない、ほとんどもぬけの殻と言っていい状態であった。
「これは……既に後退したとでもいうの?」
空弧がそう呟くが岬は
「いいえ……恐らく司令官はここに居るわ、そしてその場所はタウン全体をチェックできる司令室の筈」
と告げる、その言葉には何処か確信を持っている様な印象を受け、其れを聞いた星峰は
「やはり岬は何かを知っているの……それがこの行動に繋がっているの?」
とミラノタウンに着た直後から感じている疑念を更に強める。
天之御との約束の手前口にこそ出さないが。
そのまま内部を捜索するが、兵士も兵器も、更に言ってしまえば迎撃システムも作動しておらず、そこは司令官が居る施設とは思えない程お粗末な物であった。
「そろそろ司令室に辿り着くころだと思うけど……」
涙名が何となくそう呟く、否、何となくではなかった、涙名はこの施設の構造に覚えがあったのだ。
「その通りみたいね、見て」
そう星峰が目の前を指差すとそこには確かに司令室らしき大きな扉が広がっていた。
その扉を開け、中に入るとそこには一人の人族が佇んでいる。
「おや……もうここまで来たのですね。これは面白い事に……」
「そうはさせないわ、今度こそね!!」
「!!その声は……」
その人族が何かを言いかけると岬はその言葉を遮り、岬の声に人族は明らかに特異な反応を見せる。
「岬……此奴を知っているのか?」
八咫がそう尋ねると岬は首を縦に振る。
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