第708話 岬の怒り

「彼奴は……嘗て私の故郷が襲撃された時、その襲撃の士気を取っていた奴よ!!

自分にとって都合の良い存在、つまりブントの構成員だけを安全な場所に集め、それ以外をせん滅するように指示した存在!!」


首を縦に振った後、岬が続けた言葉には明らかに怒りがこもっていた。

其れも無理はない、故郷を襲撃してきた部隊の司令官が目の前に居るのだから。

他の面々も岬が故郷を襲撃されていた事は知っていた、だがその司令官までは知らなかった為その怒りに対し口を挟もうとはしなかった。

最もな怒りであると全員が納得していたからだ。


「やれやれ……あの時撃ち漏らした少女が今私の目の前にいるとは、やはりあの時子供だからと見逃したのが失策でしたか」

「その言葉、直ぐに事実にしてあげるわ!!あんたのやり口は徹底的に調べさせてもらったもの。

今回の一件もブントの構成員だけを安全なシェルターに避難させ、それ以外の民間人族を人柱にするつもりなんでしょう!!」


岬がそう強く言い放つと他の一同の顔色が変わる、岬の言葉の中にある人柱という言葉が引っかかったからだ。


「人柱って……どういう事なの!?」


その言葉に対し空弧が思わず動揺した声を上げる、すると岬は


「さっき先史遺産の兵器に襲撃されていたシェルター、あそこにいたのは恐らくブントの構成員ではない生粋の民間人族よ。

恐らくその民間人族を兵器の犠牲にし、別の場所で匿っているであろうブントの構成員にこの襲撃は魔神族の仕業だと証言させる、そうすれば人族側の敵意を煽る事が出来る、さしずめそんな所でしょう」


と自身の仮説を口にし、其れを聞いた司令官は


「いやはや、全く持ってその通りですよ。

ですが貴方方のせいで計画は大幅な修正を余儀なくされました。まずは貴方方を消さないといけませんからね」


そういうと司令官は手元のスイッチを入れようとする、その顔はどこか余裕すら感じられる涼しい物であった、だがその直後その腕が動かなくなり、その顔が徐々に歪んでいく。


「な、何……何故体が動かない……」


どうやら何らかの理由で体が動かない様だ。

その姿を怪訝な目で一同は見つめる、ただ一人、天之御を除いては。


「天之御……殿下?」


先程までの怒りがこもった声とは打って変わった動揺した声で岬は天之御の方を見つめる、その視線の先に映る天之御は明らかに魔王妖術を発動させていた。


「友の故郷を襲撃しただけでなく、同じ人族を人柱にしようなんて悪趣味以外の何でもないね、そんな奴が司令官として上に立つなんて烏滸がましいよ!!」


天之御は妖術の発動姿勢を崩さないままそう言い切る。

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