第675話 積もり積もる怒り
そして司令室に一同が乗り込んだ時、そこは既にもぬけの殻となっていた。
「もぬけの殻……ここを放棄して身の安全を図ったって事?」
岬がそう呟くと星峰は
「どうやらその様ね……最も、其れも失敗したみたいだけど」
と話す。その言葉を聞いた岬が
「え……?」
と思わず素っ頓狂な声を上げると天之御以外の他の面々もキョトンとした顔を見せる。
それ程星峰の発言は唐突だった。
「ほら、これを見て」
星峰はそういうと司令室の目の前にあるモニターを見る様に促す、するとそこには司令官らしき人族が入り口付近で同じ人族に身柄を拘束されていた。
「あそこにいるのは……みんな!!」
その拘束されている映像を見た人族兵士は思わず大声を上げる、其れも驚きではない、歓喜に近いトーンの声である。
その言葉から拘束している人族が協力者である事は容易に想像出来た。
「おう、遂にこの日が来たな。
これでこの施設は俺達が差し押さえられた!!」
兵士の声が届いているのか、映像の向こう側に居る人族も映像に直視する形で視線を向け、天之御達に返答してくる。
一方、拘束されている司令官は身柄をバタバタとし、隊を預かる司令官とは思えない様な体たらくを晒していた。
「おい、お前達……仮にもここの司令官である私に……」
司令官がそう言いかけると近くの人族が
「本当に司令官としての誇りがあるってんなら最後まで抵抗しろってんだよ!!
いざとなったら俺達も切り捨ててブント本部に向かおうって魂胆は見え見えなんだ」
と強く非難する口調を浴びせかける。
その様子からはこの司令官に対する強く深い怒りが感じられる。
「私達が天之御殿下の協力者だとは知らなかったみたいだけどね、ブントに所属してないってだけで随分と酷い扱いをしてくれたじゃない。
その報いを受ける時が来たのよ!!」
別の人族も又、この様に強く非難する口調を浴びせかける。
その言葉の前に司令官は最早黙り込むしかなった。
「ブントっていうのは身内にだけ甘くてそれ以外には冷酷な組織なの?」
岬がそう尋ねると
「ええ、はっきり言ってその通りだと思うわ」
「それも血の繋がりより優先されるほどにね」
と空弧と涙名が返答する。
二人の言葉にも又、兵士と同様の怒りを感じ取った岬は
「二人とも……あ、そういえば……」
と一瞬疑問を抱きかけるものの、これまでの二人の経緯と立場を思い出し、その怒りの理由を察する。
「君達が拘束してくれたその司令官の身柄はこの施設に投獄するよ、僕達はこの施設の事も含めて今後の行動を模索する為にブエルスに帰還する」
兵士と星峰達全員に聞こえる声で天之御はそう告げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます