第673話 星峰の計算

「ねえ、今この施設がどういう状態にあるか分かる?」

「ええ、この部屋のモニターにも表示する事は可能です、今表示しますね」


星峰が唐突にそう質問すると兵士は部屋の機器を操作し、その言葉通りにこの施設の現状として内部構造と外から見た状況を同時に表示する。

其れを見た星峰は


「内部構造は現在かなりの部分で兵士による抵抗が行われているわね、そしてその影響か一部で黒煙が上がっている……

一方外から見ると黒煙が上がっている以外は何が起こっているか予想に頼るしかない、そんな状況ね」


と現状を解説する。


「それがどうかしたの?何か不味い事でも……」

「いえ、寧ろ好都合よ」


涙名が少し不安げな声を上げるが、星峰の返答はそれとは真逆の強く自信を持った口調であった、更にその表情にも自信が感じられる、其れを見た涙名は星峰が何かを考えていると言う事を確信する。

その顔を見慣れているが故なのだろう。


「好都合って……どういう意味なの?」


そう尋ねたのは天之御であった、流石に今回は彼も星峰の真意を計り兼ねているのだろう、その質問に対し星峰は


「好都合の意味はこういう事よ、ほら、外の映像をみて」


といい、一同の目を外の映像に向けさせる、すると其処にはこの施設に向かってくるコンスタリオ小隊の姿が映っていた。


「あれって……コンスタリオ小隊!?彼等がこの施設に向かってきてるって事?」


空弧が思わず驚いた声を上げると星峰は


「ええ、恐らくさっき私が起こした爆発に反応したんだと思うわ」


そう語る星峰の声は確信に満ちていた、恐らく先程の爆発から此処までを計算していたのだろう、そう考えた一同は星峰の計算高さを改めて思い知る事となった。

そしてそれは同時に敵に回したくないという思いを無用とはいえ抱かせる。

そうこうしている内にコンスタリオ小隊が施設の前まで到着し其処に居たブント部隊と交戦を始める。それを確認すると


「ねえ、貴方達……彼女達のお出迎えに行ってあげてくれない?そしてここに連れてきてあげてほしいの」


と星峰は人族兵士に告げる、その言葉を聞いた兵士は


「了解しました」


と返答する。

恐らくその意図を理解しているのだろう、特に何か質問するでもなく兵士は部屋の外に出ていく。


「彼等に……この部屋を見せるつもりなんだね」

「ええ……これをきっかけに彼等に選択肢を与える事が出来ると思うから」


天之御が星峰に問いかけると星峰は明確にそう返答する、其れから少しして人族兵士がコンスタリオ小隊を連れて戻って来る。

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