第672話 魔神族同士が争う理由

「天之御様?此処で一体何を……」


現れた魔神族兵士は目の前に天之御が居る事を確認すると途端に改まった口調で話しかけてくる、だが当然というべきか、その口調、動作にはわざとらしさが多分に見受けられる。


「君達こそ一体ここに何をしに来たの?」


天之御がそう問いかけると魔神族兵士は


「いえ、この辺りで不届き者がうろついているという情報が入ってきまして……」


と返答するが、その返答は流暢且つ明快な様で明らかに動揺が感じられる声であった。

そんな兵士に対し天之御は


「そうなんだ、其れじゃもう一つ聞いていいかな?この部屋は……何?」


と言うとカプセルの中で人族や魔神族が培養されているこの部屋の風景について問いかける。


「い、いえ、これは……」

「答えられない?そんな訳ないよね、この部屋の事を知らない兵士がスムーズにここに来られる訳がない、実際僕達も案内が無かったら来られなかっただろうし」


問いかけに対して動揺した返答をする兵士に対し天之御は更に理論的に攻めていく。


「答えられない?答えられないのなら仕方ないね、此処まで案内してくれた彼等に代わりに話してもらう事にするから」


天之御はそういうとここまで案内してきた人族兵士を指差し、敢えてその姿を魔神族兵士に見させる、其れを確認した魔神族兵士が


「そ、そいつ等がうろついている不届き者です!!何故天之御様が不届き者と一緒に?」


と明らかに動揺した声を上げると天之御は


「さっき言ったでしょ、此処に案内してくれた兵士が居るって、それが彼等なんだよ、もし彼等が不届き者ならどうして僕達をここに案内してくれたりしたのかな?」


と更に兵士を追い詰めていく。


「……ええい、くそっ!!もういい、どうせ……」


半ば逆切れに近い形で荒い声を上げると魔神族兵士は妖術の使用態勢を取ろうとする、だがその動作より遥かに早く岬と涙名が兵士に接近しそれぞれの得意とする近接戦闘で兵士の意識を次々と失わせていく。


「甘いわよ、そんな動作で私達を出し抜こうなんてね」


全ての兵士の意識を失わせた後、岬はそう呟く、その直後、施設の彼方此方で爆発音や銃声が響き渡る。


「爆発に銃声……施設内の交戦が激しくなっているのでしょうか?」


空弧がそう呟くと一同をここまで案内してきた兵士は


「そうかもしれません、今回の迎撃でブント側の司令官はブントに属していない兵士を激戦区に配置していましたからその兵士達が抵抗を始めたのかもしれませんね」


と現状を解説する。

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