第667話 狂う歯車
「あ、天之御様……一体どうしてここに……」
そう尋ねる兵士達の声は明らかに引きつっており、動揺が声からも見て取れる、其れを確認すると天之御は
「何、偶々通りかかっただけだよ。
見た所君達が何処かに遠足に行くみたいだし面白そうだと思ってね、僕も同行していいかな?」
と尋ねる。
その訪ね方は傍から見れば以下にも白々しい雰囲気を漂わせるが兵士達は完全に動揺しきっているのかその言葉の不自然さには微塵も気付かない。
「は、はい……喜んで」
天之御以上に不自然な返答でその場を取り繕うのが精一杯の様だ。
そして魔神族部隊は侵攻を再開するが、そのスピードは明らかに先程よりも早くなっている。
「目的地はどの辺りになるの?」
空弧が兵士達に訪ねると兵士達は
「も、もうすぐになります……」
と目標施設のあるガンマタウンを指差す。
兵士達の言う通り、確かにガンマタウンとの距離はそれ程は無く、このまま順調に進めば後数分で到着するであろう距離だ。
だがそこに近づけば近づく程兵士達が挙動不審になっていく、最早それは誰の目から見ても明らかであった。
「さあ、到着しましたよ」
魔神族部隊の指揮官が天之御に対してそう告げると天之御は
「成程、此処に向かってきていた訳なんだね、で、此処からはどうするの?」
と尋ねる。
この口調も又白々しい物ではあるが、やはり兵士達は気付く余地もない。
「勿論こうしますよ!!」
取り繕う為か必要以上に指揮官は強く大きな声を出し、その声を合図に魔神族部隊が二手に分かれてガンマタウン内部へと侵攻していく。
其れを確認すると天之御は
「さて、なら僕達も行こうか」
と言って隠し通路側ではない魔神族部隊に同行する形でガンマタウンの中へと入って行く。
其れを確認した指揮官は
「ええい……道楽魔王のお陰で大幅な計画修正をしなくては……まずは連絡を……」
と言って通信機を取り出すと通信機には既に数十回の通信記録が残っていた、其れを見た指揮官が
「既に話が届いていたのか……これでは早く修正案を……」
と呟いた次の瞬間
「何を修正するの?」
という星峰の声が指揮官の背後から聞こえてくる。
其れに驚いた様子で指揮官が背面を振り返るとそこには星峰が満面の笑みで立っていた。
「い、いえ、まさか天之御様が参加なさるとは思っていなかったのでおもてなしのプランを用意しなければと思って……」
「そうなんだ……で、そのおもてなしっていうのは人族部隊による襲撃……なのかしらね?」
指揮官の取り繕った様な返答に星峰が返すとその瞬間に指揮官の顔色が変わる。
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