第657話 名もなき兵士の健闘

「これは……一体何があったんですか?」


シレットが大声を挙げ、その場に居る兵士全員に呼びかけるが返答はない。

既に息絶えているのか、それとも……

そんな思いがコンスタリオ小隊の中を駆け巡る。

そんな彼等を挑発するかのように目の前に魔神族部隊が出現する。


「魔神族部隊……こんな時に!!」


周囲に負傷した兵士が大勢居るという状況で魔神族が出現する、そんな状況に焦燥感を感じずにはいられなかった。

当然の様に魔神族は交戦体制を取り、コンスタリオ小隊を攻撃してくる。


「くっ、此処にいる兵士達を何とかしたいけど此奴等が居るんじゃ……

速攻で片付けるわよ!!」


コンスタリオがそう叫ぶとモイスとシレットは言われなくても承知していると言わんばかりのスピードで飛び出していき、それぞれの得意な魔法や銃撃で次々と現れる魔神族兵士を迎撃していく。

だが兵士は次々と現れ、兵士の治癒を行う余裕は全く生まれない。


「くっ、このままでは……」


コンスタリオがそう呟くのも虚しく、魔神族兵士は又も出現する。

だがその時銃声と共に魔神族兵士が撃たれ、その場に倒れ込む。

コンスタリオはモイスが撃ったのだと思い彼の方を振り向くがその時彼は別の兵士と交戦しており、此方に銃を向ける余裕はなかった。


「今の銃声……モイスじゃないのなら誰が?」


そうコンスタリオは考えるが周囲を見渡すと負傷した兵士が荒い息を上げ乍らも十を手に取り、魔神族兵士を撃っていた。それも一人や二人ではない、如何やら少なくとも何人かは意識を回復したようだ。


「こ、この先に行って下さい……この先にある施設から兵士が出てきています……

だとするとその施設内で交戦が行われ、しかもその戦況は……」


荒く絶え絶えの状態で辛うじて発せられた兵士の言葉は深刻な口調であった、それを聴いたシレットが


「ですが、貴方方は……」


と兵士を気遣う様子を見せる。だがその兵士は


「我々は大丈夫です……自力で後退します……ですから早く施設に!!」


と告げる。

コンスタリオはそれを聴き


「分かりました、私達は前方の施設に向かいます!!」


と言い、そのまま魔神族兵士の方向へと向かっていく。

コンスタリオが走ったのであれば当然モイスとシレットも続けて走っていき、魔神族部隊がそれを阻止しようとすると手に銃を持った人族の兵士が発砲を続けて魔神族部隊を撃っていく。


「ここまで戦力を伸ばしてきているとなると既に施設内の戦闘は此方が劣勢になっている可能性が高い……このままじゃ……」


内心で強い懸念を持つコンスタリオ、その懸念を証明するかのように施設に到着した際、施設からは既に黒煙が上がっていた。

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