第656話 裏をかくのか、かかれるのか

モイスの乱射した銃は壁の奥から現れた魔神族部隊に次々と直撃し兵士をその場に倒れ込ませていく。

そして瞬く間に兵士を全て退け


「やったわね、モイス!!」


とシレットが嬉しそうな声を上げるがそんなシレットとは裏腹にモイスとコンスタリオは浮かない表情を浮かべる、否正確に言えば浮かないのではなく何かを考えている顔であった。その顔に気付いたのかシレットが


「……モイス?隊長?」


と不思議そうな声で問いかけるとモイスは


「可笑しい……幾等なんでも……」


とシレットの言葉に反応したのかしていないのか分からない様な微妙な声を上げる。


「え?可笑しいって……」


シレットがモイスに問いかけるがその問いかけに応えたのは


「シレットは何も感じなかったの?今の魔神族兵士、自棄に呆気なさすぎるわ、あまり知られていない通路から仕掛けてくるような兵士がいきなりこんな所で全滅する程度の能力だとは思えない」


というコンスタリオの声であった、その声を聴いたシレットは


「言われてみれば確かにそうですけど……」


と納得したようなしていない様な返答をする、どうやらまだ完全に合点がいったという訳ではない様だ。


「もしこうした原因がこのような事態に対応する能力が低い兵士を集めた部隊であると言う事でないのだとしたら……」


コンスタリオがそう呟き、思考を張り巡らせようとしたその時、タウンの東側で爆発音が響き渡る、しかもその音は大きく、真逆の西側に居たコンスタリオ小隊の耳にも余裕で聞こえてくるレベルの物である。


「今のは爆発音!?しかも大きさから考えてかなり大規模なものだ!!」


モイスがそう叫ぶとコンスタリオは


「もしかして……私達は嵌められたの!?」


と言い、その場から一目散に走り出して爆発があった東側へと向かっていく。当然モイスとシレットもその後を追っていく。


「さっきの爆発は東側からだった……だとしたら向かった部隊が危険な状態になっているって事なんじゃ……」

「その通りよ、だから急がなければならないの」

「くそっ!!隠し通路の情報を持っていたことが裏目に出やがったか!!」


東側に向かう途中、コンスタリオ小隊は口々に爆発音への不安を募らせる、だがコンスタリオの内心では


「だけど隠し通路の情報を教えたのは此方側の部隊長だった……なら部隊長の判断が裏目に出たと言う事なの?それとも何か別の問題が絡んでいるの?」


と爆発が起こった事についての疑念も同時に浮かんでいた。

爆発が起こった場所にコンスタリオ小隊が駆け付けると、そこには負傷した人族兵士が多数蹲っていた。

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