第645話 転移する兵器

「兵器が転移してきた!?だとしたら……」


思わず不安げな声を上げる涙名、だが直後に


「涙名の不安は多分外れていると思う、だけど、僕の予想が当たっていればこいつらが出現した理由は涙名の予想より悪い形になる」


と天之御が発言し、涙名の不安は外れているとしつつも更に悪い形で問題があるという旨の発言をする。


「更に悪い形って……どういう事なんです?」

「あの兵器達の出現状況から考えると恐らく何者かが送り込んできたのではなく、兵器が自らここに転移してきたんだ」


発言の真意を問う空弧に対し、天之御はこう続ける。その返答は一同を困惑させるが只一人星峰だけは


「成程、つまりあの兵器には転移魔術を使用する技術が搭載されているって事ね」


と冷静に天之御の発言の真意を読み解き、その返答に天之御も首を縦に振る。

つまりは星峰の発言が正解であると言う事を認めたのだ。

だが其れについて話す間も無く兵器はレーザーを放ち一同を攻撃してくる。


「数はそれほどいない……ならばこれで!!弧妖術……桃色の絢爛」


空弧はこう叫ぶと桃色の花弁の様な物を兵器に向けて飛ばし、それに触れた兵器を切り裂き、更に爆発させて破壊する。

空弧の術により全ての兵器は破壊されたのを確認すると天之御はその破片へと近づいていく。


「天之御?何をする気なの?」


星峰がその行動の意味を聞こうとするがその前に天之御は


「魔王妖術……欠片の真実!!」


と言って兵器の欠片に何かの妖術をかける、だが見た目では何か変化が起きたりはしない。

その場に居る全員が首を傾げている所を見る限り、どうやら空弧達も知らない妖術の様だ。


「成程ね……やっぱり思った通りだよ」


妖術が終わったかと思うと天之御は立ち上がり唐突にそう告げる。その言葉の意味が分からず


「思った通りって……一体どういう事なんですか?」


と岬が素っ頓狂な声で問いかける、すると天之御は


「やはりこの兵器には単独で転移する事が出来る様にその技術が組み込まれてる。ただ、あまり長距離は移動出来ず、精々がこの施設の中を行き来する位だけど……」


と告げる、だが精々という言葉とは裏腹にその声には明らかに不安が混ざっていた。


「それでも兵器単体に搭載できる転移技術が実用化されているというのは十二分に脅威になり得るわ。防衛用の兵器であればこの施設の中を移動するだけでしょうけど、もしこの技術が発展して各地に移動出来る様な事にでもなったら……」


星峰のこの発言は正に天之御の不安を言い当てた物であった、その証拠に天之御の顔がその通りだよと言いたげな物に変わっていく。

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