第646話 亡霊再び
「そう、単体でも稼働出来る転移妖術、それがすでに実用化されているという事自体が大きな脅威になりうる。
この通路の中にあるという事はまだブントの手には落ちていないんだろうけど……」
「万が一そんな事になれば世界は混乱を通り越して破滅に向かう可能性もある……冗談抜きでね」
天之御と星峰の顔がそう言いながら強張るのはその場に居る全員が目にしていた。
星峰の最後の言葉を態々聞くまでもなく、他の面々んも二人の懸案が事実である事、又その内容が冗談ではない事は百も承知の上であった。
「此処の兵器に搭載しているのにここ以外で交戦した兵器にそれが搭載されていないのはまだ改良段階なのか、それとも敢えてそうしているのか……」
「可能性としては五分五分ね、それに他の可能性も考慮するならもう少し下がる。さっきの通路の罠と言い、この施設が戦略上重要な拠点であったことは明らかよ」
思案する涙名に対し星峰はこう回答する。
退けた兵器の奥には扉があり、そこには居れば何か分かるかも知れないという予想も一同の脳裏をよぎる、だが同時にそれは罠の可能性も示唆していた。
「どうする?あそこに見える扉に入ってみる?」
「当然だよ、僕達が危険を恐れている訳にはいかない。それにこんな技術が存在している以上、時間的猶予は殆ど無い」
星峰に促されると天之御は退けた兵器の欠片を押しのけ、そのまま奥の扉へと入っていく、するとそこには宿舎のような光景が広がっていた。
「ここは……この施設の作業員が寝泊まりしていたのでしょうか?」
小奇麗に片付けられたその風景を見て空弧はそう呟く。
彼女の発言も最もであった、扉はきっちりと締められ通路越しに幾つも並んでいる。
先程までとは打って変わって兵器が出てくる様子も見られない。
「これは……穏やかな空気ではありますね。ですが……」
「ああ、それだけに逆に不気味さを感じるな」
豊雲と八咫がそう呟くとそれが的中したかのように目の前に光が集まり始める、それを見た八咫は
「これは……!!来るぞ!!」
と叫ぶ。
八咫の叫びに一同が光に目を集中させるとその光は少年の姿を形作り一同の目の前に立ち塞がる。
「こいつ……那智町の地下で現れた亡霊と同じ……」
その光に見覚えのある豊雲は槍を構え、交戦体制をとる。
その甲斐あって光の少年の攻撃動作が見えると直ぐに攻撃に映る事が出来、一同は先制攻撃を受けずに済む。
豊雲の先制攻撃を受けた光の少年が消滅するのを確認すると八咫は
「ここでもあの実験が行われていたのか……」
と怒り混じりの声を発する。
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