第643話 フェイクルーム

天之御の活躍により兵器が鉄屑と化したものの、これまでとは違う兵器の存在に一同は改めてこの施設の危険性を認識し警戒心を強める。


「今の兵器の攻撃……激しかったですね、この生産ラインが破損しても構わないから侵入者を迎撃せよとプログラムされていたのでしょうか?」


だがその激しすぎる攻撃は一同に更なる疑念を抱かせる、兵器とは言えあれだけの激しい攻撃を重要な場所でしてくるとはとても思えなかったのだ、だがその疑念を払うかの様に直後に涙名が


「多分それは此処が破損しても構わない場所だからだと思う」


と告げる。


「破損しても構わない?生産ラインが?どういう事?」


涙名の発言に対し岬は次々と疑問を口に出す、それ程今の涙名の発言が腑に落ちず引っかかるのだろう。それを聞いた涙名は


「今の兵器の攻撃をかわしている時に気付いたんだ、この部屋に仕掛けられたからくりに」


と返答する、その顔は真顔であり、嘘や適当で発言している様には全く見えない。


「からくり?一体この部屋に何が……」


空弧も岬と同じく疑問形で言葉を続ける、それ程涙名の言葉は不可解な物なのだろう、そしてそれを証明するかのように涙名は歩き出し、生産ラインの制御装置の電源を落とす。


「ちょ……何をしているの?」


その行動の意図が全く読めず、不可解と言わんばかりの言動をする空弧、だがその直後に電源が落ちたのは生産ラインではなかった、周囲の壁の光が落ち、そこに映し出されていた生産ラインの映像が消えて只の壁と化したのである。


「生産ラインの映像が消えた!?一体どういうことだ……」


周囲の状況が全く読めないと言わんばかりに困惑した声を上げる八咫、だが星峰と天之御は涙名の言っているからくりに気付いたらしくどこか納得した表情を浮かべていた。


「そうか……そういう事だね、この部屋は生産ラインなんかじゃなく、壁にその映像を流していただけの只の部屋、分岐通路に過ぎないんだ」


天之御がそう言うと星峰も


「だから兵器も思い切り攻撃してきたって訳ね、元々何もない部屋であれば遠慮する必要は兵器でなくともない、まして兵器であれば総力を持って攻撃してくるのは当然だもの」


と先程の兵器の攻撃がこの部屋のからくり故だったことを察する。


「一寸待って、つまりこの部屋は生産ラインなんかじゃなく……」

「そう。只の囮であり分岐通路であり罠であるって事だよ」


岬が困惑した声を上げると涙名は自身の仮説を明確な言語にして発言する。

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