第613話 悪夢の移動手段

その途中、幾度となく施設内部で建造されたと思われる兵器の迎撃、妨害に会い、その体に退けはするものの、此処がどれだけ危険な施設なのか、その点を改めて実感させられもしていく。


「くっ、中々勢いに乗って調査出来ない……せめて兵器が何所で生産されているのかだけでも特定出来れば……」


涙名がつい弱音を口にする、だがその内容自体は理に叶ってはいた。


「確かにそうではあるね……だけど現状ではまだこの施設の地図すら入手出来ていない。データルームに辿り着く事が出来ればいいのだけど……」


涙名の意見を肯定しつつも天之御は現状ではそれは険しい道である事を伝える。そしてそれはデータルームを探すことが最優先事項である事も示していた。


「それにこの施設に来てからブントの兵士をまだ見かけていないのも気になるよ。まるで此処から生きて帰れない事を確信している様な……そんな気がする」


涙名が続けて話す言葉も又、否な予感を考えざるを得なかった、その言葉に真実味が強く出ていたからだ。


「だとしたらブントの兵士はここに居ないのか、それともブント自体も又、この施設を完全に把握出来ている訳ではないのか……そう考えれば不可解な襲撃も合点は行くわね」


空弧の呟きに他の面々も首を縦に振る、そしてそれを検証せよと言わんばかりに一行の目の前に転移魔術の印が刻まれた壁が現れる。


「あれって……転移魔術の印!?これがこんな壁に刻まれてるって事は……」

「ここからこの壁を通じてどこかに移動し襲撃を仕掛ける計画だって事か……」


印の意味に気付いた涙名がそう叫ぶと八咫は続けてそう発言し、その印が何を示しているのかをいち早く悟る。

だが一同がその印に触れようとするのを邪魔するかのように左右の壁が開き、そこから又多数の兵器が出現する。


「迎撃部隊が出てきたって事は、やっぱりこの印はそれだけ大事と言う事なのでしょうか、最も、今はそんな事を話している時間も無いですが!!」


豊雲はそういうと手に十八番の槍を構え、素早い動きで兵器に接近しその接合部分をピンポイントで突き、貫いて破壊していく。


「さて、では検証を開始しましょうか」


豊雲がそう言うと一同は全員首を縦に振り、そのまま壁に刻まれた印に手を触れる。

すると一同は印の奥に作られている魔術の通路を通じてどこか別の所へと移動する。

移動先で周囲を見渡すと空弧が


「ここは……先日の那智街襲撃時に兵器が出現していたエリアです」


と告げる。

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