第611話 魔窟のマトリョシカ
施設内部は機械が蠢き、物々しい雰囲気が漂う不気味な空気に満ちていた。
その場に居るだけで苦しくなるような空気を感じつつ、一同は奥へと進んでいく。
「外から見ただけでも広大な施設だけど、中は予想以上に複雑だね」
涙名がそう呟くと星峰が
「それだけここが重要施設として建設されたという事なのかも知れないわね、そしてそんな重要な施設であるという事は……」
と返答すると同時に天井から機関銃の発射音が鳴り響いてくる。
一同がその音に反応し機関銃を躱して天井を見上げるとそこには鳥の様な形の小型兵器が機関銃を構えて止まっていた。
「ちっ、外見だけ生命に似せてるってのが嫌らしいぜ」
その姿を見た八咫が嫌悪感を隠さない口調と同時に兵器に対して羽を飛ばし破壊する。
「これも迎撃用の兵器なんだろうか……」
「恐らくはね。こんなものまで配備されているとなると、この施設に安全な場所など存在しないと考えた方がいいと思うわ」
涙名と星峰の会話に他の面々もここがどれだけ危険な施設なのか改めて把握する。そして、尚の事このままにしておく訳にはいかないという認識を強く持つのであった。
そこから暫く先に行くとそこには扉がある、だがその扉は一見すると壁と同化しており、場数を踏んだ者でなければ通り過ぎてしまいそうなレベルで隠されていた。それも一つや二つではない、幾つもの扉が同様の使用になっているのである。
「この扉の隠し方……彼女が言っていたあの街と同様の仕様ですね」
「ああ、正確に言えば彼女がコンスタリオ小隊から聞いたになるけどね」
扉を見た空弧がそう呟き、天之御が言葉を続ける。その内容からして彼女とはオンディーズタウンの指揮官の事だろう、その内容からそれを想像するのは容易だった。
「なら、中を調べてみる価値はありそうですね。まあ、鬼や蛇が出てくる可能性も無いとは言えませんが」
「元々この施設自体が魔窟だからね、何が出てきても不思議じゃない、開けてみよう」
岬と天之御のその一言により扉は開錠され、一行は部屋の中に入っていく。
だが部屋の中は誰かの個室と思わしき私物と寝具、仕事用の機器が置かれているだけであり、兵器等が潜んでいる訳でもなかった。
「只の個室の様ですね、中も別に可笑しな所はありませんし、個々の職員はこの部屋で寝泊まりしていたのでしょうか?」
「なら端末を調べれば何か分かるかも知れないわね」
岬の呟きに星峰は端末の起動を提案し実際に行動するが直ぐにパスワードが表示され、そこから先に進めなくなってしまう。
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