第608話 身近に潜む巨悪

「そうね……それに魔神族が動けばそれに合わせて裏側も動かざるを得ないかもしれない。そう考えるとモイスの考えも一考に値する話ではあるわね」


自己嫌悪を含んだ発言ではあるがコンスタリオの同意を得た事に対しモイスは内心複雑な感情を抱く、コンスタリオも同じ事を考えている事の証明となる為だ


「それともう一つ、今回私達が訪れた施設に私達のデータが既に登録されていたという点も気になるわ」


このままこの話だけをしていても先に進まないと思ったのかコンスタリオは別の話を切り出す。


「私達のデータが既に登録されていた事がですか?それは情報共有の観点から別に不自然ではないんじゃ?」


シレットはそう答えるがコンスタリオは


「通常のタウンであれば私もそう考えたかもしれないわね、でも今回調査したベータタウンは他のタウンとは特色が違い過ぎる。最先端の技術をふんだんに用いて建造された城壁の様な施設、そこに部外者のデータを態々登録しておくと思う?」


と指摘し、其れを聞いたシレットも先程の自身の回答を撤回するかのような気付きを得た表情を浮かべる。


「確かに……そういわれると私達が施設の中にこっそり忍び込む事も可能になる訳ですからね、そこは確かに不自然かもしれません」


コンスタリオの指摘にシレットも同意する。自分達が実際にするわけではないとはいえあまりにも不用心な話だからである。

その事を察したシレットは先程の自身の発言を撤回し


「だとするとあの施設には何時か私達が訪れる事が想定されていた、そういう事になるのでしょうか?」


と口にする。シレットのその言葉に対し


「かもしれねえな。或いは裏で動いている奴等は俺達も自分達の中へ引き込むつもりなのかもしれねえ、だとしたらスターからの忠告を受けずにその事を勧誘されたりしてたら……」


とモイスは不安を表情に出し


「その裏側の片棒を担がされた挙句、スターと対立していたかもしれないわね……」


コンスタリオも自身が感じる最大の懸念を口にする、最もそれは違う形ではあれ既に実現してしまっているのだが。


「だとすると、その裏側は私達の身近にいる……しかも隙あらば私達を取り込もうとしている……そういう事になるのでしょうか?」


シレットがそう口にし、モイスとコンスタリオの表情も少し暗い物になる、何処に敵が潜んでいるのか、その点が全く分からないからだ。


「その可能性も考えられるわね、そしてそうだとするなら……」


話せば話す程不安が募る、そんな状況であった。

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