第609話 決断の時

「今はスターも何か行動を起こしている筈、私達も私達に出来る事をしましょう」


コンスタリオのその言葉で取り敢えず当面の行動方針は決まり、モイスとシレットも同意する。

一方、ブエルスにおいても天之御達が何らかの会話を行っていた。普段はそこに居ない豊雲も同席しているあたり、何か重要な話をしている事が伺える。


「そうか……彼等が彼女に協力を依頼したか……」

「それだけ彼等も疑念を抱き始めたと言う事なのでしょうか?」

「もしそうだとしたら此方にとっても追い風ね。疑念を抱いてくれた事で少なくともいいように転がされ続けると言う事は無くなるでしょうから」


天之御が最初に口火を切ると空弧と星峰がそれに続ける、それがコンスタリオ小隊についての話である事は傍から聞いていても明らかであった。


「しかし、彼等が疑念を抱いてくれるきっかけになったとはいえ、ブントの行動がこの所活発になっているという点は決して見逃す事は出来ない問題点です。

ブント自身にも予測出来ていない事態が起こっている可能性もあるとはいえ、この所のブントの行動の多さは以前に比べ明らかに活発になっています」


豊雲がそう告げると他の面々も険しい顔で頷く。それは豊雲の言っている事が事実であるからに他ならない。


「確かに、ここ数か月の間にブントが起こしている行動は大小問わず増加傾向にある。奴等が内部で派閥抗争でもやっているのなら内輪揉めと言う事で責めるチャンスになるけど……」

「もしそれ以外の目的があるとしたら事と次第によってはとんでもない事になりかねない。だからこそ今回兵器を送り込んできた通路と思われる施設は早く叩く必要がある」


涙名と岬の発言も又、この状況が決して望ましい状況ではない事を意味している、そこから派生して八咫が


「俺の生まれたあの施設の事を考えても奴等に施設を渡しておくのは碌な事にならねえ、一刻も早く手を打たねえと……」


と深刻な表情を浮かべて話す、自身の内面と向き合う覚悟を決めたとはいえ、その内心は決して穏やかではないだろうと言う事は周囲の面々も容易に想像出来た。


「八咫の言いたい事は分かってる。だから行くよ、その施設を叩きにね!!」


天之御がそう力強く言う、他の面々も分かっていた、天之御がこの施設の事で一同を集めたのは、そしてこれから何処に向かおうとしているのか。


「じゃあ、愈々向かうのね」


星峰が確認するように問いかける、その確認は行先ではない、覚悟の確認であった。

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