第607話 隠される疑念
「ええ、上手く表現できないけどあそこにいる人族からは人間としての情を感じる事が出来ない。まるで機械……それも先日から襲撃してきている兵器の様な印象を受けたわ」
コンスタリオの表現は些か行き過ぎている様にも感じる、だがシレット、モイス共にその表現に異を唱える事は無かった、彼等も同じように感じていたからだ。
「だとしたらあの人族が生まれ育った環境にその問題があるのはまず間違いないのでしょうけど、仮にそうだとしたら一体彼等はどこで如何生まれ育ったのか、疑問を解く鍵も恐らくそこにあるんでしょうね」
シレットがそう続けるとコンスタリオは
「ええ、けどあそこまで隠されているとなるとその個人データが本物かどうかも正直怪しい物があるわね。それを知る術が何かあるといいのだけど」
こう続け、疑問を解く為の道筋はある程度検討がついている事を告げる、だが何よりも難しいのはその道筋を実行する事であった、その事はモイスとシレットも承知している。
「仮に個人データが偽装されているとなるとスターが言っていたこの戦争の裏はそうしたデータを管理する部署にまで入り込んでいると言う事になりますね。
一体その存在はどこまで根深いんでしょう……」
予想を上回る裏側の規模の大きさにシレットも困惑を隠せない、それはモイス、コンスタリオも言葉にこそ出さないものの同様の意見であった。
「それらを踏まえて考えると、残る一点、ガンマタウンの調査も可能な限り早急に行う必要があるわね」
コンスタリオがそう発言するとシレット、モイスも同意する。特にモイスについては
「ああ、万が一この三つのタウンが連携して裏側と関わっていたりしたら今回俺達が調査に入った事を悟られてガンマタウンに情報を流される可能性もある。そうなったら今後の新しい情報はまず得られないだろうな」
と自身の考えも続けて述べ
「ええ、此れだけ類似点があるとなるとモイスが言う様に繋がっている可能性も高い。悠長に調査しているとモイスの懸念通りの事態を招きかねないわ」
コンスタリオもそれに同意する。
「だけど、かと言って立て続けに向かっても不信感を与えてしまう可能性が高い。そうなると独自の行動を取る権限に影響が出てくる可能性もある。少しは間を置く悲痛様があるわ」
だが一方で安易に行動できる話ではないとも理解していた。
「そうなるとどう動くべきか……魔神族が何かしてくれれば其れを口実にする事も出来そうだがな」
こんな時にだけ敵襲を期待する、そんな自分を少々自己嫌悪しつつもモイスはそう口にする。
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