第600話 募る不信感、積もる不安

拭い去れない不安を内心に抱きつつも虎穴に入らずんば虎子を得ずの精神でコンスタリオ小隊は渦中の施設内部へとその足を運んでいく。

施設の中は物々しい機械で溢れ返っており、同じ人族側の施設である筈だがコンスタリオ小隊は何処か息苦しさを感じていた。

その場に居るだけで息が詰まり、本当に窒息してしまうのではないか、そう思える程に施設内の空気は重く不穏な物であった。


「この施設の中も人族が見当たりませんね」


シレットが呟いたこの一言も又その疑念をふかめる要因であった。

施設の中だというのに現れるのは機械ばかりであり、勤務している人族も在住している防衛部隊も見当たらない。だがそうした道を進んでいく内にコンスタリオ小隊の前に漸く一人の人族が現れる。

挑発に細身の外見、どうやら女性の様だ。


「あの……貴方はこの施設に勤務されているのですか?」

「あら?貴方達はもしやコンスタリオ小隊?どうしてコンスタリオ小隊がこんな辺境の地へ……」


その女性は大層不思議と言いたげな表情と声でコンスタリオ小隊に聞き返してくる。どうやらコンスタリオ小隊がこうした所に居るのが余程不思議な様だ。


「近くで行われた先頭に参加したまでは良かったんだけど、他の部隊とはぐれてしまってね、で、連絡だけでも入れられないかと思ってこの施設を訪れたんです」


コンスタリオが先程の男性と同じ解説をその女性に行うと女性は


「成程、それでこの施設を訪れたという訳ですね」


と納得した表情を見せる、その表情を見てコンスタリオは


「ええ、なので通信設備だけでも貸して頂ければ……」


と取り敢えずの希望を伝える。するとその女性は


「了解しました、私の方から司令官に掛け合ってみます」


と返答する。その返答を聞いたコンスタリオが


「私達が直接お願いしなくても良いのですか?」


と疑問を投げかける。それは軍人だからというより礼節的に考えてもごく自然な流れのように思えた、だがその女性は


「ええ、司令は礼節よりも目の前の問題の対処を最優先とする方ですから、皆さんが問題をお抱えになっているのであればその事を誰が話してもその対応は変わらないでしょう」


と告げ、あくまで司令官は協力してくれるという前提の下で会話を進める。だがその返答を聞き、コンスタリオは逆に何所か不安と違和感を覚える。

その女性がその場から去って行くのを見届けるとモイスは


「何なんだろうな、この言い知れぬ違和感……」


と自身も又、先程の女性に対して何らかの違和感を抱いた事を吐露する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る