第601話 違和感が満ちる場所

「あの女性もどこか機械的な印象ね……確かに人族として生きてはいるんでしょうけど……」


モイスが吐露した違和感に対し、コンスタリオはそれを掘り下げる形で返答する。

つまり、コンスタリオ自身も感じていたという事なのだろう。


「だとしたらますます疑問ですね、この施設……いえ、アルファタウンとベータタウン、幾ら名前すらないタウンだからって居住している人が不自然すぎる。

やはり、何か隠されているのでしょうか?」


シレットがそう呟くとコンスタリオは


「そう考える方が自然かもしれないわね、それを明らかにしたいのであれば行くしかないわ」


と告げる。


「行くって、何処へ?」

「そこはまだ定まっていない。けど、ここでじっとしているわけにはいかない」


モイスがコンスタリオに行先を訪ねるとコンスタリオは行先は決まっていないと返答する。その返答はコンスタリオとモイスには予想外の出来事であった、コンスタリオがこうした行き当たりばったりの事を告げる事はこれまで無かったからだ。

いや、よくよく考えればそれに該当する事はあったかもしれない、だがこうして明確な言語にするのは今回は初めてである。

そんなコンスタリオに対し、シレットとモイスは黙って付いていく。

決して盲従しているわけではない、只他に案がある訳でもなく、そうする以外にこの場で出来る事が思い浮かばなかったのである。そして暫く歩いていくと何かの扉を見つけるものの、その扉は鍵は疎か取っ手に相当する物すら見当たらず、一目見ては壁と区別がつかない。


「この扉……壁と区別がつきませんね。一体中はどうなっているんでしょう?」


シレットがそう呟くとコンスタリオは


「全自動で開くから便利と言ってしまえばそれまでだけど、何かしらね、この違和感……壁に対してではなく、区別がつかない扉ばかりが揃っているというこの空間はに対する違和感は……」


と呟く。コンスタリオの言う通り、扉は一つでは無かった、周囲を見渡す限りでも至る所に壁と区別がつかない扉が設置されており、ある意味では宿泊施設の様にも見える。

するとその扉の一つが開き、その中から人族が出てくる。


「あら?見ない顔ですね……と思ったらコンスタリオ小隊の皆さん!?」


出て来た人族男性はコンスタリオ小隊を見ていきなりそう呟く、それを聞きシレットは


「?どうして私達の事を?」


と問いかける。その人族は問いかけに対し


「そりゃ魔神族相手に幾つもの功績をあげられていますからそのお名前はこの施設にも届いていますよ」


と説明する。

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