第574話 八咫の確信

「一体ここで何が起こったの……せめてデータルームに辿り着ければそれを調べる事が出来るかもしれないのに……」


涙名がそう呟くと他の面々も黙って頷き、それに同意する。それは単にそれが正論だからと言うだけでなく、この施設で起こった惨劇の謎を調べる必要性を全員が感じているためでもあった。だがその状況においても八咫だけは他の面々とはどこか違う雰囲気を受ける顔を浮かべていた。

決して同意していない訳ではない、だが何処か他の面々とは違う方向を向いている、そんな表情であった。だが、それに気づく者はいないのか特に誰もそれに対して触れる事は無いまま一同は部屋の外に出ていく。

そして残る扉はあと一つになっていた、その一つを開ける直前天之御は


「悲しい亡霊と出会うのは此処で最後にしたいものだね」


とふと呟く。それを聞いた星峰は


「そうね……でも何故かしら、この奥には最後どころかもっと大きな悪夢が広がっている様な、そんな気がしてならないの」


と天之御に同意しつつも自身の勘はそれを否定している事を告げる。それを聞いて空弧は


「星峰がそう語るとなると、否な予感は避けられそうにないわね……それに、私も感じているの、否な気配をね……」


同意すると同時に更に自身も又何かを感じている事を告げる。それを聞いて天之御は自身の中にある不安を強めつつも扉を開けていく。

その奥では星峰や空弧の感じていた嫌な予感が的中した光景が広がっていた。

扉の奥にはこれまで先史遺産の施設で幾度となく見てきたカプセルや機械があり、それらが何を意味しているのか、一同にはすぐに分かったからだ。


「このカプセルに機械……これってやっぱり……」


岬がそう口にすると天之御は


「ああ、人工生命の生産場……そう関gなえてまず間違いない。となると恐らくさっきまで戦ってきた亡霊を生み出している思念も……」


天之御がそう言いかけた時、八咫が不意に


「恐らくじゃない、間違いなくあの亡霊を生み出している思念を発している生命はここで作り出されたものだ」


と天之御の言葉を遮り、完全に断言する言い方をする。


「八咫!?どうしたの急に……」


余りに突然言葉を差し挟んできた為、呆気に取られる天之御。


「その断定した口調から考えると単なる官という訳ではないのでしょう?

あの亡霊の思念が此処で生み出された生命が発している物であるという確証は何なの?」


星峰はあくまでも冷静に八咫に問いかける。すると八咫は


「それは……」


と言うとその理由を語り出す。

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