第573話 強まる疑念、深まる確信

「天之御……今のは?」

「星峰と空弧の言葉を聞いたからね、一度試してみたんだ。この浄化の力が通用するのかを、そしてそれが通用したと言う事は、やはりあの光は思念体と考えてまず間違いないと思う」


天之御の使った術の詳細を聞く星峰、その結果は自分達の仮説を確信へと変えていく物であった。


「つまり、あの光の亡霊もあの黒い靄と同じく強い思念によってこの世界に残っていると言う事ですか?」

「そういう事になるけど、この場合重要なのはそこじゃない」


岬の質問に対し天之御は返答しつつも重要なのはそこではないと告げる、その返答に岬は


「重要なのはそこではない……では一体何が重要なのです?」


と当然の疑問を更に投げかける。するとそこに星峰が


「重要なのはそこではなく、亡霊が生み出される程の強い思念を持った状態でこの世界から去った存在がここに居たと言う事よ。

先日の遺跡の様に突然日常を奪われた様なね」


と岬の疑問に回答する。それを聞いて岬は


「つまり……ここで何か大きな惨劇があった可能性がある……」


と呟き、その呟きに天之御と星峰は揃って頷く。だがその様子を見て八咫は傍から見て分かる程に複雑な表情を浮かべていた、他の面々の視線が天之御と星峰に向かっている事でそれに気付いている者はいなかったが。


「他の扉も調べてみましょう、もしかしたら何か分かるかもしれません」


空弧のその発言を受け、一同は食堂を後にして他の扉の奥も調べ始める。

それぞれの扉の奥には寮の様な共同生活スペース、勉強の為と思われる学校の様な学習部屋、医療室等子供を社会に送り出す為のような施設が並んでいた、だがその中に一つ、明らかに学校には似つかわしくない部屋があった、訓練施設である。

其処はこれまで調べてきた先史遺産の施設と同様、明らかに兵士を育成する為の訓練器具や医薬品が置かれていた。それを目にした時、涙名は


「これって……どうやらこの施設の裏側が見えてきた気がするね」


と発言する。その涙名の発言にはその場に居た全員が内心で同意していた。

すると目の前に光の亡霊が又しても現れる、否、此処まで調べてきた部屋全てにも光の亡霊は現れていた。

天之御の浄化妖術により浄化されている為、一同に危害は及んではいないものの、繰り返し現れる亡霊は確実にここで何か惨劇があった事を確信に近づけていく。


「ここにも亡霊が……この施設で起こった事は一体……」


繰り返される亡霊との遭遇に天之御の顔も哀しみを隠せない、その中でも浄化妖術を放ち、天之御は亡霊を浄化する。

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