第572話 纏わりつく亡霊と疑念
その亡霊が一向に迫ろうとするが、其れに先んじる形で八咫が先導し左右の黒羽を飛ばして亡霊に当て、亡霊を消し去る。そのスピードは最早電光石火とすら言える。
其れを見た星峰が……
「八咫……」
と何かを言いかけるが八咫は
「急ぐんだろ?だったらこんな所で油を売ってる時間はねえ筈だ」
と言って先を急ぐ様に促す。その促しに星峰は言葉を続ける事が出来なくなる。
「そうね……」
そう返すのが精一杯であった。
すぐ目の前にある扉は全部で七つ程あり、そのどれもが怪しい雰囲気を醸し出している。
「とりあえずここから調べてみようか」
天之御はそういうと一番左の扉を開き、それに続いて一行は中に入って行く。
するとそこはこれまでよりもさらに大きく広い部屋であり、多くの机や椅子が置いてあった。
「どうやらここは食堂みたいだね、部屋の奥の方には自給自足をする為か食糧生産プラントも併設されてる」
天之御がそう言うと一行はその部屋の奥に目をやる、するとそこには確かに機械的ではある物の、食物や家畜を育てられるような環境が整った場所が見受けられた。
「と言う事はやはり、この施設は何かを育てていたって事?そうでなきゃ少なくともあんなエリアが作られる筈がない」
涙名の仮説はこの状況から考えられる最も高い可能性を表していた、だがその仮説は当然
「だとしたら、その何かと言うのは一体……あまりいい予感はしないわね」
と言う星峰の言葉に現れている様に新たな疑問を生む。
そしてその予感を的中させるかのように部屋に光が集まり始め、又しても亡霊がその姿を現す。
「又現れたわね……一体この亡霊は何処から沸いて出ているの」
岬が感心したような、呆れた様な口調で零すと空弧は
「どこから……と言って返せるとしたらこの施設に満ちている負の思念から湧いて出ている、と言うのが一番明確な答えになるわね。
だとすると、この施設でもやはり何かがあったのよ」
と続ける。
「その何かっていうのは……」
「負の思念が満ち溢れる程の悲劇であったと言う事はまず間違いないでしょうね。そしてそれが原因となってこの施設に負念が満ち溢れ、それを原動力としてこの亡霊達が現れている。そう考えるのが妥当な線だと思うわ」
涙名の発言に星峰がそう続けると同時に亡霊は一同に襲い掛かろうとしてくる、だが其れを見た天之御が
「魔王妖術……浄化の闇!!」
と言って掌から小さな黒い球体を放ち亡霊に当てる。
するとそれに当たった亡霊は動きを止め、少したってからどこか満足げな笑顔を浮かべて消滅していく。
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