第571話 亡霊が潜む保育場
「それは分からないけど、兎に角このまま放置出来る存在でない事は確かよ」
星峰はそういうと交戦体制を取り、目の前にいる亡霊達に向かっていく。
そして握り締めた剣を振るって亡霊を切り裂き、剣で切り裂かれた亡霊は消滅していく。
「戦闘能力はそれ程でもないみたいね……やはり悪意や怨念と比べると他責の気持ちが弱い事が影響しているのかしら……」
そう口にした星峰の声は一見すると冷静であるように思える、だが付き合いの長い涙名には分かっていた。この声が星峰が内心を押し殺している時にこそ出るものだと。
「怨念でなくとも執着心はこの世界に害をなす……ここで終わらせてあげるしかないわ!!」
空弧も星峰に続く様に声を張り上げ、剣を手にして向かっていく。すると亡霊は手を翳し、衝撃波を放って抵抗してくる。
しかしその狙いは単調であり、難なく避ける事が出来た空弧はそのまま亡霊に接近し切り裂いていく。
星峰と空弧の活躍により、大した被害が出る事も無く亡霊を掃討する事に成功する。
だがそれを見ていた八咫はどこか複雑な表情を浮かべていた。
それに気付いていないのか居るのかは不明だが天之御は
「さあ、皆急ごう。今の亡霊がこの先にも居るとしたら尚の事この施設を放置しておくわけにはいかない」
と一行に対し先に進む様に促す。
その言葉に促されるままに一行が先に進むと今度は幾つもの部屋へと続く扉がある大部屋に辿り着く。
この大部屋にも玩具や保育用の器具があり、まるで保育園の中にいる様な感覚に陥る。
「この部屋も大部屋で玩具等が転がってるわね……でも……」
岬がそう告げると天之御が
「ああ、さっきの部屋より玩具の対象年齢が低いな。ここで成長した生命がさっきの部屋に行く、そう言う事なんだろう」
と推測する。その推測に異を唱える者はいなかった。
「なら、ここから先に行く扉の中にも保育用の施設や器具が揃っているのでしょうか?」
「ならいいけどね……何だか嫌な予感がするわ。それも只の予感じゃなく、これまでの経験に基づいた嫌な予感が……」
空弧の発言に続ける星峰の言葉は何時も通り……否何時も以上に警戒心に満ちていた。それは一同に警戒心を募らせる、これまで星峰がこうした発言をすると大抵的中していたからだ。それが早くも的中してしまったのか、目の前に再び光の亡霊が現れる。
「サミシカッタヨ……カマッテヨ……」
先程の亡霊と同じ言葉を繰り返す亡霊に岬は
「同じ言葉を繰り返している……確かにあの黒い靄と同じね」
と先程の空弧や星峰の発言を思い起こす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます