第561話 迫る運命の分岐点

「このままじゃ、人族部隊は……」


シレットが漏らした言葉には危機を通り越して絶望すら感じられた、そしてその絶望が通じてしまったのかコンスタリオ、モイスも口を閉ざし、ただシレットの呟きだけがその場に響き、三人は俯く。だが地図に表示されている人族部隊の数は減っていかない。それどころか兵器の数の減少が加速していくのが少し経ってから確認出来た。


「え……どういう事なのこれ?人族と魔神族が合流しているのに双方が交戦していない……それどころか兵器の数が更に減っている?」


シレットの声には俄かには信じがたいという印象が込められていた、だがそれは事実として目の前のモニターに表示されている画像が物語る。


「つまり……さっきの火口での私達の時と同じく、魔神族が兵器の迎撃に協力していると言う事になるわね」

「信じられねえ話だが、実際にその場を見ちまったからな……そうも言ってられねえか……」


その画像を見てコンスタリオが仮説を立てるとモイスはそれを否定的な言葉を用いつつも肯定する。先程の火口での出来事を踏まえるとコンスタリオの仮説も外れとは言い切れないからだ。


「でも、さっきは私達だけだったから協力したんじゃ……」

「この画像を見る限り、多勢に無勢だから介入したという訳ではなさそうね……現場を確認する必要があるわ、戦場の映像を!!」


立て続けに協力する事象を目撃したのが響いているのか、シレットは明らかに動揺している、其れを見てコンスタリオは自身の仮説を確かめるべく音声操作で戦場の映像を映そうとする、だが


「衛星機能のトラブルにより、映像の投影が出来ません」


そう音声操作を管理する人工知能が返答してくる。


「くそっ、こんな時に!!」


タイミングが悪すぎると言わんばかりの反応をするモイス、其れを聞いてコンスタリオも


「しかも命令として待機している以上、此処で勝手に出撃すれば命令違反として処罰されかねない……もどかしいわね」


と言い方こそ丁寧ではあるものの、この状況に明らかに苛立ちを募らせていた。


「見て下さい、人族も魔神族も反応は全く減らず、兵器の反応だけが減少しています。これはもう……」


自分自身でも信じられないという声を張り上げて画面に注視するように告げるシレット、彼女の言う通り、この数分で兵器は瞬く間に数を減らしていた。


「一体……どうなっているの?立て続けに同じような襲撃と協力……この戦乱が大きく動こうとしているの……」


その光景を見て、コンスタリオは何かを予感せずにはいられなかった。

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