第527話 新たなる光

そして無情にもその膜は消滅し始める。


「つっ!!このままじゃ……」


焦りを感じたのか、涙名は要塞に向かって飛び出して行こうとする。だがそれを天之御は制止する。


「天之御!?一体何をして……」

「涙名、あれをよく見て」


自身を制止する天之御に一瞬焦りの声を上げるが、天之御に促されるまま涙名は光の膜に目を戻す。するとその光の膜は消滅しているように見えるが、見方によっては一か所に収束しているようにも見える。そして


「はあっ!!」


と言う声と共にその光は斬撃となり、迫っていた要塞の主砲を切り裂きつつその斬撃による衝撃でダメージも与える。それも自己修復が追いつかない程の深いダメージだ。


「な、何が起こったんだ……」


いきなりの出来事に困惑を隠せない八咫。困惑しつつも視線を光の方に集中するとそこには白金の様な色の気迫を身に纏う星峰とそれを見上げ、同じく困惑した顔を見せている空弧の姿があった。


「星峰……なの?」


天之御と涙名が声を揃えて問いかける。すると星峰は


「ええ、如何やら又、この力に救われたみたいね」


と言い、手元の剣の宝石部分を見せる。すると宝石部分も又、同じ様に白金に変色している様な状態になっており、そこから星峰が纏っている気迫が溢れ出ている様だった。


「得体の知れない力ではあるけど……今は使うしかないわ!!」


星峰は覚悟を決めた表情と声を見せ、要塞に向かって走っていく。そして


「弧妖剣術……新緑の旋風!!」


と言って高速で移動しつつ白金の気を纏った剣を振るい、要塞の全身に装備されている火器を次々と切り落としていく。切り落とした部分から再生しようとはするものの、先程までと比べると明らかに再生スピードが遅い。


「どうなっているの……星峰が切った所はさっきまでよりも明らかに再生が……」


その光景に困惑し、立ち尽くす岬。そこに空弧が


「浄化しているのよ……あの白い気迫が」


と言葉を添える。如何やら空弧は他の面々よりはこの状況で何が起こっているのかを理解している様子だ。それを察したのか天之御は


「空弧、君には分かるのか?」


と問いかける。それに対し空弧は


「はっきりと断定は出来ませんが、私の一族は死霊を操る力に長けていますからこの位の事は私でも分かります。

星峰が切った所は再生に使われているあの黒い靄の効力が明らかに低下しているんです」


と続ける。


「なら、僕達もじっとしているわけにはいかないな!!」


天之御のその声にその場に居た全員も立ち上がり、要塞に向かっていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る