第526話 黒の脅威

「あの要塞の反撃、涙名が居た場所を確実に狙っていたわね」


涙名の問いかけにそう返答する星峰、直後に涙名が険しい顔で要塞の方を見るとそれに合わせて星峰も要塞に目をやる。


「回避は不可能ではないけどこちらの攻撃に対して正確に反撃を返してくる。元が機会と怨霊であるのであれば痛みは感じないのだろうけど……」


涙名が何を言いたいのか、星峰と天之御には分かっていた。


「あれだけの正確な反撃をしているとなると、何かトリックがあるんじゃないか、そう言いたいんだね」


天之御が確認するように問いかけると涙名は頷いて同意する。その直後に要塞は体の中心から大型砲台を出現させ、黒い靄をそこに収束させる。


「何か大掛かりな物を撃ってくるつもりなの!?そうはさせない!!」


其れを見た空弧は妖術で攻撃しようとするが、其れを見越したかのように要塞はチャージスピードを速めて空弧に狙いを定めてくる。


「くっ、しまった……この体制じゃ……」


既に妖術の使用態勢に入っている空弧は動く事が出来ない。それを見た天之御は


「空弧っ!!くっ、魔王妖術……純白の浄火!!」


と言って要塞の下から白い炎を出現させ、その炎で要塞を焼き払おうとする。その効果はあるのか要塞から黒い靄が少しずつ消えていくものの、チャージのスピードは減速しない。


「くっ、天之御の魔王妖術でもあの要塞の動きは止められないの……」


星峰はそう言いながら空弧の素に駆け寄り、辛うじて動ける状態になった空弧の手を引いて走り、ギリギリの所で放たれた大型砲台のビームを回避する。

ビームが直撃した後の地面は抉れ、その威力の凄まじさを物語っていた。


「くっ、もしこんな物が直撃したら……」


その光景に星峰も驚きと困惑を隠せない。だが更に驚くべき事に要塞はそのビームをすかさずもう一撃放ち、星峰と空弧を狙って来る。


「!!これだけの威力を持つビームを連射してくるっていうの!?」


空弧がそう呟いている間にもビームは迫り、最早回避は間に合わない。


「空弧、星峰!!」


天之御の魔王妖術も間に合わず、直撃を食らうしかないと覚悟を決めた星峰と空弧は両目を閉じる。だがその時、星峰の剣に埋め込まれている例の宝石が輝きだし、その輝きが星峰と空弧を包み込む。


「又あの宝石が輝いた……あれは一体何なんだ……」


そしてビームが直撃してもその輝きは消えはしない。だがビームは続けて放射され続け、もし輝きが消えたら直撃は避けられない状況だ。

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