第528話 要塞の最後
一同はそれぞれ妖術を出し、星峰がダメージを与えた部分を中心に攻撃していく。するとその効果は明らかに先程までとは異なっていた。修復のスピードも遅く、与えているダメージも先程までとは目に見えて違っている。
「一体どうなっているの?さっきまでとはまるで効き目が違う」
「星峰の力が要塞の内部に浸透し、あの黒い靄の力を抑えているのだと思うわ。いえ、もしかしたらそれ以上で……要塞の内部からダメージを与えているのかも」
岬の疑念に対し返答する空弧、だがその返答も又困惑が混じっていた。それ程今の星峰の状態はこれまでの想像を上回っているのだろう。現に天之御達が攻撃を加えている間にも星峰は高速で動き回り、更なる攻撃を与えていた。それにより要塞が装備している外部の火器全てにダメージが通り、完全に機能不全に陥らせる。そしてその勢いのまま
「これで終わりよ、弧妖剣術……白金の封邪!!」
そう叫んで剣に自身が纏う白金の輝きを更に増して纏わせ、勢いをつけて兵器の中心、先程の主砲が存在している場所を貫く。そしてその貫いた先から星峰が出てくると同時にその要塞はその全身を白く輝かせて消滅していく。
「貴方達はもう……眠っていいの。眠るべきなの」
要塞を貫いた星峰は誰にも聞こえない様な小さな声でそう呟く。そこに
「星峰、その力は……」
と言う涙名を筆頭に他の面々が集まってくる。それを確認すると
「この力が何なのかについては私にも分からない。ただ、この力から感じるのはあの黒い靄とは真逆の力……そういう風に思えるの……」
と星峰は涙名に返答するがその直後に崩れる様に膝を付く。
「星峰!?大丈夫?」
天之御がそう言いながら駆け寄ると星峰は
「ええ……一寸疲れただけ……」
と言う。言葉こそありきたりではあるが、その顔から本当に疲労が蓄積しているのは明らかに見て取れた。それを見た天之御は
「兎に角、今日の捜索は此処までにしよう。星峰の事も心配だし、今回の一件であの黒い靄がこれまでの認識以上に脅威になる事は確実になった。その事について話す必要がある」
天之御のその言葉に異を唱える者は居なかった。それを確認すると天之御は転移妖術を使い、その転移妖術で一行はブエルスへと帰還する。
帰還後、天之御は全員にまずは休息を取る様に告げ、今回の一件についての会議は又後で行うと言う形を取る様に指示する。その言葉にこそ現れていないものの、天之御が星峰の事を心配しているのは明らかであった。
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