第522話 遊び場に紛れる悪意

天之御を先導に一同は目的となる建物に向かって進み始める。その最中も周囲を見渡しては行くものの、目に入るのは朽ち果てた建造物や荒れ果てた花壇と言った廃墟と言うイメージをより強化する物ばかりであった。そんな中を暫く進むと一同の目の前に公園らしき広場が目に入って来る。


「遊具が色々あるわね……ここは公園だったのかしら?」


岬がそう呟くと八咫が


「そうかもしれねえな。だがここも……」


と言葉を続けるものの、それは途中で止まってしまう。その公園も又、荒れ果てて遊具も朽ち、辛うじてその形を留めているだけであった。嘗てはこの公園にも笑い声が響いていたのだろうか……そう思うと一同はよりやりきれなさを感じる。

だがそのやりきれなさすらも感じさせなくなる事態が起きる。朽ち果てた遊具が動き出し、兵器へと変形したからだ。


「!!こんな所まで擬態兵器が!?」


驚いた声を上げる空弧だがその体は既に臨戦態勢をとっている。動き出したと同時に体の酸化も修復され、見るからに交戦体制をとっているのが分かる。


「酸化が修復された……自己修復機能を持っているとでもいうの?」


涙名はそういうと


「闇爪残波」


と言い、黒く染めた爪から衝撃波を放って兵器を攻撃する。それは兵器に当たるものの、破損個所からみるみる内に修復していってしまう。


「自己修復……これもここまで交戦してきた兵器にはなかった機能だね、いや、あの黒い靄の効力でならあったかもしれないけど……」


その瞬間を目にし、そう発言する涙名。その声からはこの兵器に対する警戒心が溢れ出ていた。だが次の瞬間


「魔王妖術……青潮乱舞!!」


と言う天之御の声と共に兵器の上から大量の水が矢の様に降り注ぐ。その水が当たった兵器は見る見る内に錆びついていき、遂にはその体の全てが劣化し崩壊していく。

それをみた天之御は


「こんな所にまで兵器が入り込むなんて……一体この街はどんな街だったんだ……」


と困惑と怒りが入り混じった呟きを漏らす。だがその呟きには明らかに怒りが強く表れていた。


「天之御……」


先程の事と言い、天之御の兵器に対する心境に不安を隠しきれなくなる星峰、だがそれを表情には出さない様に務める。自分がそうしてしまうと周囲が更に不安に包まれてしまう事は容易に想像出来るからだ。

公園の遊具に擬態した兵器を退け、一行は更に先へと進んでいく。その後も何度か擬態した兵器との交戦はあったものの、一同は無事、目的地となる建物に辿り着く事に成功する。


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