第521話 荒廃させる悪意

その風景は一応は街としての体を成しては居る。だが道路は罅割れ、建物の壁は涙名が少し手を触れただけで崩れる程に劣化し、その他の建造物も同様である。

花壇と思われる土の集まりには花はおろか、雑草一本すら見えず、その色も失われている。


「この荒廃……生命が滅んでしまった末路の様に見えますね……いえ、本当に滅んでしまったのでしょうか……」


唖然としたままの口調で岬が呟く。すると星峰は


「そうかもしれないわね……そして、其れをやったのは!!」


と言うと剣を抜き、背面にその視線を向ける。するとそこには街中に配備されていたと思われる迎撃用の兵器が数体攻撃態勢を取っており、星峰が振り返るとほぼ同時に攻撃を仕掛けてくる。


「くっ、これまでの兵器より反応が速い……やはり強化されているの?それとも……」


全ての攻撃が星峰に集中していた事が幸いしたのか、星峰が辛うじて攻撃を避ける事で一行は無傷で兵器の攻撃をやり過ごす事が出来た。そして星峰は兵器の方に接近していき、その剣を振るって兵器を薙ぎ払っていく。だがその光景を見た涙名が


「ねえ、今……」


と呟くと


「ええ、私も確認した」

「それに妙だ。この兵器の動き……恐らく星峰自身も気付いてはいると思うけど……」


と空弧、天之御も同調する。彼等は見逃さなかった。星峰が剣を振るった時、装飾品の宝石が一瞬強く輝いていたのを。


「今の兵器、何処から沸いてきたんだ?やっぱりこの前の兵器みたいに擬態していたのか?」

「その可能性は考えられなくはないわね。それでなくてもこの廃墟は謎が多そうな気がするわ。慎重に進んだ方が良さそうね」

「進むのは構わないけど、何処に進むの?」


兵器に対する疑問から何時の間にか行先への疑問に変わるが、その事を言っている余裕など今の一行にはなかった。そして何処に進むのかと言う話に対し天之御は


「この廃墟で唯一何かを得られるとしたら……あそこだろうね」


と言って廃墟の北の方にある白の様な大きな建物を指差す。だがそこも見るからに荒れ果てており、とても何かがあるようには見えない。


「あそこ……ですか?しかし……」


そう疑問を呈する空弧の言葉は最もである。だが


「どの道、この廃墟で他に何かを得られそうな場所は見当たらないわ。だったら少しでも目途をつけていかないと。もしこの廃墟に擬態した兵器が多数存在しているのだとすれば尚の事ね」


と語る星峰の言葉に納得し、自身の疑問はとりあえず内心に収める。

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