第523話 待ち受ける更なる脅威

しかしそこも廃墟、生命等存在する筈も無かった。生命は疎か、兵器による荒々しい出迎えすらも無く一同は建物を眺める。


「一応、形は整ってはいますね。だけど……」

「ああ、やはりここも朽ち果てている、中にある機械が辛うじて動いていればいい方か」


空弧の発言に続く天之御の発言にも不安の色が見え隠れしていた。廃墟の中にある朽ち果てた建物、それだけでも恐怖の演出には十分であるが、更にこの時は情報を入手出来るか否かと言う不安もある。


「ここまで来て戻る訳には行かない。先に進もう」


天之御はそういうとここまでと同様に自ら先導して建物の中に入り、星峰達もそれに続いて中に入って行く。だが中もやはり朽ち果てており、見える壁は手が触れただけで崩れてしまう程脆くなっており、床も何時底が抜けるか分からない程のギシギシと言う不気味な音を常に鳴らしている。


「ある意味これまでの調査で一番の難易度かもしれませんね……」


岬がそう呟くと星峰は


「かもしれないわね……そして、その難易度を更に高める存在も来たみたいだし」


星峰がそう呟くと前方から多数の兵器が現れる。その大きさは建物の中で運用されているにしては大型であり、この床が抜けてしまわないのが不思議な程である。


「大型兵器……と言う事はやっぱりここには何かあったの……」


涙名は内心でそう考えると


「闇爪粉砕!!」


と言い、出現した大型兵器の中心に爪を立てて突き刺し、そのまま貫いて破壊する。


「一撃で破壊出来たのなら、今の兵器は擬態兵器程の脅威ではないか?」


その光景を見て八咫はそう呟くが涙名は


「いや、今のは運よく中心部分を貫けただけだよ。今の感覚で分かったけど、この兵器の装甲は従来よりも強度を増しつつ、同時に軽量化に成功してる」


と言い、寧ろ警戒感を強める。


「強度を強めて軽量化を……つまり従来型より機動性が高いって事ね。だったらこの床が抜け落ちないのも少しは納得出来るけど……それにしたって何故こんな大型兵器がこんな所に……」


涙名の警戒心を感じ取ったのか、星峰も警戒心を強める。


「それを確かめる為にもこの先に進もう」


天之御のその一声で一同は足を再び動かし、先へと進んでいく。そして行き止まりに着くとそこには大きな扉があった。先程の兵器が楽々出入り出来る程の大きさがあり、兵器が此処から出てきたのは容易に想像出来た。


「大型の扉……あからさますぎる気もするね」


天之御がそう話すと星峰は


「なら入るのを止める?」


と揶揄う様に話す。それを聞いて天之御は


「いやいや、この状況では入るしかないよ」


と軽く笑顔を見せて言い、その扉を開く。

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