第516話 萎れかける気持ち

一方、自室へと戻ったコンスタリオも又、今回の一件について思考を張り巡らせていた。勿論知らない間に迎撃されていた兵器の件も気になるが、コンスタリオにとってそれ以上に気になっていたのは靄を出す兵器が突如として侵攻してきた事であった。


「今回の侵攻、明らかにあの兵器がそれを目的として放たれたのは間違いない。でもそうだとしたらあの兵器の背後には何らかの黒幕が居て、そいつが行動を開始したと言う事なの?だとしたらそれは魔神族……いえ、もしそうなら魔王とあの兵器が抗戦しているのは妙な事になる。

やはり、この戦乱には何か大きな裏があるの……」


今回の一件について、コンスタリオは口には出していないものの、もう一つ引っかかりを抱えていた。出現した兵器の背後に何者かが黒幕として存在しているのではないか、そう思わずにはいられなかったのだ。そしてそれが的中していれば、それは新たな敵が存在しているという事でもある。

そう考えるとコンスタリオは言い知れぬ不安を内心に抱え、その不安を払しょくしたくなったのか思わず目の前の端末に手を伸ばす。そして何らかの文章を端末に打ち込み、その文章を誰かへと送信する。その宛先にはスターの名前が表示されていた。

送信スイッチを押し、文章を送った直後、コンスタリオは


「……何をしてるのかしら、私は……らしくもなく弱音をスターに出すなんて……スターだって大変な状況なのに……」


とやや自己嫌悪に陥りながらその背中を椅子に預け、全身の力が抜けてしまったのを感じる。そして疲労困憊していたのか、そのまま目を閉じて眠りについてしまう。

それと時を同じくして某所において何かの会話が行われていた。その内容は


「虎の子を少々とはいえ起こしておきながらあっさりと追い返され、更にこのざまとはな……」

「彼等を此方側に取り込む戦略についても見直しを余儀なくされると彼女から苦情が来ていますよ」

「あの子が苦情を言って来るって事は、よっぽど不味い方向に傾いているみたいね。彼等にあの施設を見られたことと言い、どうもこの所流れが良くないわね」

「ああ、人族魔神族を問わず我々の存在を把握している者達は徐々にその矛先を此方に向けつつある。更にそれを逸らすトリックにも気付かれている以上、中々に難しい立場に立たされているからな」

「西大陸も雲行きが怪しくなっているが、南大陸の方はどうなっている?先日魔神族に動きがあったと聞いたが?」


と明らかにブントの、其れも上層部が集まっている内容であった。

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