第517話 暗く重い影
「ええ、魔神族が那智町で何かを調べていたらしいわ。あそこは現在私達のエリアではない以上、具体的な所までは分からないけど」
集まっている一人がそう言い切るものの、その声には明らかに焦りが感じられる。否、焦りではなく何か後ろめたいものがあるのかもしれない、そう感じさせる声であった。
「だがあそこにはあれがある。あれを詳しく調べられれば我々にとって不都合な事実になるのは間違いない。そして恐らく奴等もそれに気付いているだろう」
「ええ、遠方から見ている限り、那智町の防衛戦力は明らかに強化されている。それを気付いて増強しているという事なんだろう」
「キャベルの戦力の一部を西大陸に移したのが裏目に出ているな……あの戦力を加えて全軍で進行すれば那智町を陥落させる事等容易い事であろうに」
「それはそうなのよね。その件についてはキャベルからも文句が来ているわ。でも今更戦力を戻す訳にもいかないでしょう。それをそんな事をすれば今度は西大陸が奴等に侵攻される事になる」
西大陸と南大陸で不穏な空気が渦巻いている、そう察するには十分過ぎる会話である。机以外何もないその空間がその会話と空気を一層不穏な物にさせている。
「それを打開するべくあの兵器達をけしかけてみたのだが、まさかあのような結果になるとは……」
「不甲斐ない私達への天誅と言う事なのかもしれませんわね。これ以上の失態は許さないと」
「その天誅のお陰で我が方にも少なからず被害が出ています。これでは本末転倒も甚だしいでしょう。更に本来の目的である反対勢力の鎮静化も失敗しています」
「奴等がまさかあのタイミングで出てくるとはな……これは人族側の反対勢力に対する締め付けを強化する必要もあるか……」
不穏な会話は更に続き、最早安心出来る要素はこの会話の何処にも感じられない。暗く思い空気と明かりの部屋の会話はそれからも延々と続いていった。
翌日、ブエルスにて何時もの様に謁見の間に集まる星峰達、そして集まり終えると天之御が
「皆、既に伝達は行っていると思うけど今日はこれから又あの地下遺跡を調べに行くよ。あんな事が起こった以上、先史遺産についてより多くを知る必要があるからね」
天之御がそう伝えると一同は全員首を縦に振る。
「ワンカーポに戻った豊雲も地下についてより深く調べてくれるとの事ですし、私達も急がなければなりませんね」
岬がそういうと天之御はすかさず転移妖術を使い、問題の地下遺跡へと移動する。
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