第491話 兵器再び

何時になく慎重な発言をするシレットに対し


「そうだな、俺もそう思う。迂闊にあの奥に進むと蟻地獄に引きずり込まれそうな、そんな気がする」


と続ける。モイスのその発言も又、普段の彼からは想像し難い物であった。そうした発言が双方から出てくる辺りにもこの場所の異質さ、警戒性が現れている。


「ええ、とりあえずデータはある程度手に入ったし、次の未確認ヶ所に行ってみましょう。ここを調べて終わりという訳ではないのだから」


コンスタリオがそう告げると三人はその施設を一旦後にし、そのままその足で他の未確認施設へと向かっていく。その最も近い場所に合った未確認エリアは市街地の中にありながら周囲の建物とは異なる雰囲気を醸し出す明らかに異質な場所であった。


「何なんでしょう、此れ……こんな施設を見逃すなんて到底考えられません。となるとやはりこれは……」

「ええ、意図的に隠されていると考えてまず間違いないわね。そしてそんな事をする理由は……」

「ここに見られたくない物がある……か。全く、だったらなんでこんな目立つ街中に作ったんだ?」


周囲の建物と違い、大掛かりである上に明らかに何らかの施設である事を醸し出している為、モイスは呆れた様な口調でそう口にする。それを聞いたコンスタリオは


「確かにモイスの言う通り、どうしてこんな建物が堂々と街中に存在しているのか、その点は大きな疑問だわ。或いはそうした、そうせざるを得なかったの?」


と口には出さないものの、仮説を組み立て始めていた。

一行が施設の扉を開け、中に入ろうとしたその時突然基地周辺からコンスタリオ小隊目掛けて魔術らしき弾丸が飛んでくる。それを躱すとシレットは


「今のは魔術!?と言う事はまだ兵士がここに居るの?」


と困惑した言葉を口にするがコンスタリオは


「いえ、居るのは兵士ではないわ」


とシレットの言葉を否定する。


「兵士じゃない、じゃあこれは……」


その言葉にモイスが反応し、弾丸が飛んできた方向目掛けて拳銃を撃つ。すると崩れる様な機械音が響き、そこに何かが居た事が分かる。三人がその方向に近づいてみるとそこには破壊された兵器が転がっていた。


「ここにも兵器が配備されているなんて……でもどうして兵器が魔術を使えたりなんかしたんでしょう?」

「先史文明の技術にはそれを可能にするものがあるのかもしれないわね。先史文明自体、何があっても不思議ではない部分がある以上、考えられない事じゃないわ」


シレットの疑念に即答するコンスタリオではあるものの、自身も又この兵器については疑念を抱いていた。

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