第492話 謎めく会社の中へ

「兵器が魔術を使う事自体には然程の疑問は無い。でもだとしたら、どうして人族部隊はその技術を各地で共有しようとしていないの?ワンカーポの技術にもそれらしい技術は無かった。単なる権力争いで片付けるには妙な気がするわ」


これがコンスタリオの内心に渦巻いている疑念であった。それを表情にこそ出していないものの、どこか隠しきれていないのか肩に不自然に力が入る。


「兵器が魔術を使う……もしそんな事が可能であるならそれを各地に広めた方がずっと勝率は上がる筈。なのに何故、一部がそれを独占しているの?さっきの兵器の施設と言い、腑に落ちない事が増えていくわ……」


その内心を知っているわけではないものの、シレットもコンスタリオと同じ様な疑念を抱いていた。やはりこれも同じ小隊に長く属しているが故なのだろうか?

そうした疑念をはっきりさせる為にもコンスタリオ小隊は施設内部へと突入していく。すると今度は先程の兵器開発施設とは違う、どこか生命の匂いを感じさせる柄のある壁や小物等が置いてある入り口であった。


「さっきの施設とは雰囲気が違うな。まるで会社の受付みたいだ」


モイスがそう口にするとコンスタリオは


「その認識で正解なのかもしれないわね。この雰囲気は明らかに生命が存在していた空気が感じられるわ。最も、今存在しているのかどうかは不明だけどね……」


とモイスの回答を肯定する。ここでは特に迎撃等も無くそのまますんなり遠くに進む事が出来た。そして階段を見つけ、上の階に上がっていくとそこは机や事務所が並び、益々会社としての雰囲気を強めていく。


「やはりここは会社なのでしょうか?でも一体何をする会社なのか……見ている限りでは特に隠す様な事はしていない様に見えますが」

「それが逆に怪しむべきなのかもね。内部で軍と繋がっている……何て事自体は良くある事だけど、それがどんな形で作用しているのか、その点が全く分からないもの」


そんな彼等の疑問に答える為か、その目の前には資料室があった。その立札を見て早速中に入り、その壁にびっしりと敷き詰められた無数のファイルを目にする。


「ここが資料室ね……紙のファイルって事はかなり昔からの記録も保管されているのかもしれない」

「確かに……これだけのファイルをデータ化するにはそれなりの時間がかかりそうだよな」


シレットの発言にモイスが続ける。だがコンスタリオは


「或いはそれを行う前に何かが起きて実行不可能になったか……その可能性もあるわね」


と別の可能性を検討していた。

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