第446話 呪い断つ剣
「ぐうっ……ぐあああっ……」
それと同時に空弧の父は星峰に切られた喉元を手で押さえて苦しみだす。
「何!?何が起こったの!?」
状況が分からず困惑する岬。それはそこまで露骨ではないものの、八咫や涙名も同じであった。そんな彼等を尻目に空弧は
「あそこから取り込んだ怨霊が溢れ出ているのよ。だから苦しんでいるんだわ。あの姿を維持するのに必要な力が外部に流出しているから!!」
と説明する。
「怨霊が流れ出ている!?それって……」
困惑は収まったものの、新たな不安の感情を口にする岬、それは空弧も同様であった。だが星峰は更に
「弧妖剣術……純白浄化!!」
と言ってその怨霊を自身の体に取り込んでいく。それを見て空弧は
「星峰!?何をやっているの、そんな事をしたら……」
と驚嘆の声を上げる。行動を問いかけてはいるものの、星峰が何をしているかは理解している様だ。その様子は行動そのものと言うよりも星峰がした行動の結果に向けられているのは明白であった。
「このまま奴から怨霊の力を奪うわ!!そして……」
星峰はそういうと空弧の父から怨霊の力を奪い取り、その姿を元に戻していく。だが一方で星峰はどんどんその体を黒く染め上げていく。
「止めて!!このままじゃ貴方が……」
そう叫ぶ空弧の声は悲痛な物が感じられた。だが星峰は
「大丈夫よ。さっき言ったでしょ、妖術を使っているの」
と笑顔を浮かべ、その体を白く輝かせる。すると侵食していた黒い靄は一瞬で消滅し、その体は元の色に戻る。
「星峰……君は……」
天之御はそう小さな声で呟く。そう呟いたのは星峰の雰囲気が先程までとどこか違う様に感じたからだ。見た目も体色も変わっていない、変わっていない筈なのにどこかが違う。そう感じずにはいられない何かがあった。
だがその呟きをかき消すかのように
「お、おのれえーっ!!」
と言う空弧の父の雄叫びがその場に響き渡る。それを見た星峰は
「空弧!!」
と名前を叫ぶ。その叫びを受けて空弧は
「分かっているわ、この血族の呪いは私の手で断ち切る!!」
と言って剣を構える。そんな空弧に空弧の父は
「お前ごときに私が……」
と言いかけるがそこに星峰が
「弧妖術……桃色の黄泉路!!」
と言い、空弧の父の周りに桜吹雪を散らせる。その桜吹雪は空弧の父に纏わりつき、その動きを封じる。そこに星峰が接近していき、その体に構えた剣を突き立てる。
剣を突き立てられた空弧の父は最早言葉を発することもなくその場に崩れ落ちる。
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